日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

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Nfatc1 short isoformは、破骨細胞分化および自己発現増幅に必須である

Essentiality of Nfatc1 short isoform in osteoclast differentiation and its self-regulation.
著者: Omata Y, Tachibana H, Aizaki Y, Mimura T, Sato K.
雑誌: Sci Rep. 2023 Nov 1;13(1):18797. doi: 10.1038/s41598-023-45909-3.
  • 破骨細胞
  • Nfatc1 short isoform
  • 自己増幅

小又 尉広

論文サマリー

Nuclear Factor of Activated T cell 1 (Nfatc1)は破骨細胞分化に必須の転写因子であり、破骨細胞分化の過程で著増する。Nfatc1には複数のアイソフォームがあり、著増しているのはshort form(Nfatc1/A)である。これはP1およびP2の2種類のプロモーターの内、P1によって誘導されていることがT細胞で見出されている(Chuvpilo S et al., 2002, Serfling E et al., 2006)。short formが破骨細胞分化に重要であることが示唆されるが、これまで証明はされていなかった。

ゲノム編集によりNfatc1 short form特異的KOマウスを作製すると、ホモKOマウスはE13.5までに胚性致死であった。しかも胎仔肝細胞から破骨細胞分化を試みても、野生型(WT)と異なり生細胞がほとんど観察されず、前駆細胞数が充足していないことが示唆された。そこで、山崎聡博士らが開発した造血幹細胞をin vitroで増幅する培養法を応用し、E11.5胚から破骨細胞を分化させる方法を開発した。WT細胞からは破骨細胞が分化し、骨吸収活性を示した。一方、KO細胞からは多核細胞は形成されず、骨吸収活性も見られなかった(図1)。骨髄細胞から分化誘導した破骨細胞と同様に、WT細胞では、マーカー遺伝子であるAcp5 (TRAP)およびCtskの発現が見られた。

佐藤 浩二郎

トランスクリプトーム解析を行い、RANKLにより発現増加する遺伝子およびNfatc1 short form欠損により発現減少する遺伝子を網羅的に同定した。エンリッチメント解析および遺伝子ネットワーク解析から、破骨細胞分化に関与するGO termを抽出した。

KO細胞ではRANKL刺激によるNfatc1/AのmRNAレベルの増加が見られないことから、Nfatc1/Aは自己増幅的に発現を増大させ、これはNfatc1/B, Cでは代償できないことがわかる。著増したNfatc1/Aが更に破骨細胞分化における各種重要分子を誘導することで、分化を促進する。一方で、Nfatc1の活性を負に制御する分子(Kbtbd11、Rcan1)の発現も誘導し、ネガティブフィードバックループを形成していることが示唆された(図2)。

佐藤 浩二郎

著者コメント

コンディショナルノックアウトマウスの場合、LoxP組換え効率は100%ではないため、組換えを免れた細胞が表現型の発現をマスクすることが懸念された。そこで、exon 1に変異を入れたshort form特異的KOマウスを作製したが、Nfatc1全体のKOマウスと同様に胎性致死になっただけではなく、意外なことに胎仔肝から単球系破骨細胞前駆細胞を誘導することもできなかった。そのためin vitroで造血幹細胞を増殖させて破骨細胞を分化させる方法を試みた。しかしながら、血液前駆細胞を効率よく増幅するために、予想以上に苦労した。細胞数が多すぎると、血球細胞以外の細胞増殖が優勢となり、少なすぎると血球系前駆細胞は、増殖しなかった。今回の培養方法は、他のKOマウスの解析や、破骨細胞以外の血球系細胞の解析にも有用性があると考えている。

(自治医科大学内科学講座アレルギー膠原病部門・小又 尉広)