日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

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低出力超音波パルスよりも高強度の超音波は機械感受性イオンチャネルPiezo1を介して骨折治癒を促進する

Higher-intensity ultrasound accelerates fracture healing via mechanosensitive ion channel Piezo1
著者: Shota Inoue, Changxin Li, Junpei Hatakeyama, Hanlin Jiang, Hiroshi Kuroki, Hideki Moriyama
雑誌: Bone. 2023 Dec; 177: 116916. doi: 10.1016/j.bone.2023.116916. Epub 2023 Sep 28.
  • 低出力パルス超音波(LIPUS)
  • 骨折
  • PIEZO1

井上 翔太
著者(左)と森山英樹教授(右)

論文サマリー

低出力超音波パルス(Low-intensity pulsed ultrasound: LIPUS)は骨折治癒期間を短縮する治療手段として臨床で広く用いられてきた。しかし2017年に報告されたメタアナリシスにおいて、LIPUSが骨折治癒を促進しないことが実証され、大きな議論となった。我々はこれまでに、LIPUSよりも高強度の超音波がより高い骨形成能を有することを明らかにしてきた(Calcif Tissue Int. 109: 215-229, 2021、Ann N Y Acad Sci. 1497: 3-14, 2021)。一方で、臨床的な内軟骨性骨化を介して治癒する横断骨折への治療効果は不明である。そこで、本研究ではLIPUSよりも高強度の超音波が横断骨折の治癒に与える影響を明らかにするとともに、その治癒メカニズムを解明することを目的とした。

マウス脆弱性骨折モデルに対して、LIPUSに該当する0.04 W/cm2、またはより高強度の0.2 W/cm2の超音波による治療を行い、骨折治癒過程に与える影響を調査した。その結果、LIPUSは骨折治癒に影響しなかったが、より高強度の超音波は骨折仮骨の石灰化を増強し、骨折部の力学的強度の回復を促進した。また、より高強度の超音波を照射した骨折仮骨では、軟骨量および骨芽細胞数の増加が確認され、LIPUSよりも高強度の超音波が骨折早期の軟骨形成と骨芽細胞分化を刺激することで骨折後の内軟骨性骨化を促進できることが明らかとなった。

井上 翔太

次に、超音波が骨折治癒を促進するメカニズムについて検証した。骨折部に経皮的に送達される超音波が生物学的効果を発揮するためには、超音波が機械受容器に感受され、機械的信号が細胞内の生化学的信号に変換される必要がある。そこで、機械感受性イオンチャネルのひとつであるPiezo1に着目した。Piezo1阻害剤であるGsMTx4を投与した骨折マウスに超音波を照射したところ、超音波照射後の仮骨の石灰化の促進や骨芽細胞数の増加が減弱することが確認され、超音波による骨折治癒促進にはPiezo1が関与していることが明らかとなった。また、MC3T3-E1骨芽細胞株とOcy454骨細胞株の三次元共培養系において、Piezo1のノックダウン実験を実施した。骨細胞のPiezo1をノックダウンし、超音波を照射したところ、超音波照射後のRunx2やAlplなどの骨芽細胞の骨形成関連遺伝子の発現が減弱した。したがって、超音波による骨芽細胞性骨形成の促進には、骨細胞のPiezo1を介したメカノトランスダクションが必要であることが示唆された。

本研究結果から、LIPUSより高強度の超音波が内軟骨性骨化を促進し、骨折治癒を加速できることが見出された。また、その治癒メカニズムとして、骨細胞Piezo1による超音波刺激の感受・応答が重要であることが明らかとなった。

著者コメント

LIPUSは骨折治癒促進法として用いられていますが、超音波がどのようにして感受され、細胞内応答を誘発するのかについては明らかになっていませんでした。LIPUSの有効性にコンセンサスが得られていないのは、その生物物理学機序が十分に理解されていないためと考えます。本研究では、LIPUSではなく、より高強度の超音波が骨折の治療に有効であることを見出し、その治癒機序の一端を明らかにすることができました。今後は、より高強度の超音波による骨折治療法の臨床応用に向けて尽力していきたいと考えています。最後に、本研究のご指導を賜りました、森山英樹教授をはじめとする先生方に、この場をお借りして深く感謝申し上げます。

(神戸大学大学院保健学研究科・井上 翔太)