日本骨代謝学会

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透析患者における活性型ビタミンD製剤と骨折発症の関連性:DOPPS研究

Active Vitamin D Use and Fractures in Hemodialysis Patients: Results from the International DOPPS
著者: Komaba H, Zhao J, Karaboyas A, Yamamoto S, Dasgupta I, Hassan M, Zuo L, Christensson A, Combe C, Robinson BM, Fukagawa M.
雑誌: J Bone Miner Res. 2023 Sep 17. doi: 10.1002/jbmr.4913. Epub ahead of print.
  • 活性型ビタミンD製剤
  • 血液透析
  • 骨折

駒場 大峰
ASN Kidney Week 2022でのポスター発表(2022年11月)

論文サマリー

活性型ビタミンD製剤は透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症をコントロールするためにしばしば使用され,副甲状腺ホルモン(PTH)の産生を抑制することにより,高回転型骨病変を改善する。さらに,活性型ビタミンD製剤は骨粗鬆症の治療薬としても使用され,透析患者においても骨強度を高める可能性が期待されている。しかし,活性型ビタミンD製剤がPTHを抑制する作用とは独立して,透析患者の骨折リスクを抑制するかどうかはこれまで明らかではなかった。

そこで本研究では,国際的なコホート研究であるDialysis Outcomes and Practice Patterns Study(DOPPS)のフェーズ3~6(2005~2018年)に参加した21ヶ国の血液透析患者41,677人のデータを使用し,活性型ビタミンD製剤の処方と全骨折および大腿骨近位部骨折の新規発症との関連を検討した。解析にはCox回帰分析を用い,PTHを含むさまざまな潜在的交絡因子で調整した。また,追跡期間中に治療内容(活性型ビタミンD製剤の有無)が切り替わった場合は,その時点で観察を打ち切るper-protocolアプローチを用いた。さらに,適応による交絡を最小化するため,施設レベルの活性型ビタミンD製剤の処方率と骨折リスクの関連性も検討した。

DOPPS参加時点において,活性型ビタミンD製剤は全体の55%の患者に処方されていた。骨折の新規イベント発生率は,全骨折で24/1000人年,大腿骨近位部骨折で10/1000人年であった。活性型ビタミンD製剤の処方に関連する調整ハザード比は,全骨折で1.02(95%信頼区間0.90~1.17),大腿骨近位部骨折で1.00(95%信頼区間0.81~1.23)であり,有意な関連性は観察されなかった(図1)。また,施設レベルの活性型ビタミンD製剤の処方率と骨折リスクの間にも関連性は認められなかった。

駒場 大峰
図1.活性型ビタミンD製剤と骨折発症の関連性.Model 1:非調整,Model 2:年齢,性別,人種,透析歴で調整,Model 3:Model 2に加え,15種類の併存疾患で調整,Model 4:Model 3に加え,Kt/V,BMI,Alb,Cr,Hbで調整,Model 5:Model 4に加え,Ca含有リン吸着薬,Ca非含有リン吸着薬,カルシミメティクスの処方で調整,Model 6:Model 5に加え,Ca,P,PTHで調整。

本研究の結果は,PTH高値の症例のみに活性型ビタミンD製剤の処方を推奨する現行のKDIGOガイドラインを支持するものと考えられる。活性型ビタミンD製剤にPTHコントロールを超える効果があるのかどうか,今後さらなる研究が必要である。

著者コメント

活性型ビタミンD製剤は透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症をコントロールするために数十年以上にわたり使用されていますが,骨折リスクを抑えるかどうかは明らかではありませんでした。今回の検討で,活性型ビタミンD製剤と骨折リスクの関連性は示されなかったわけですが,結果の解釈には注意が必要です。本研究では,PTHとは独立した活性型ビタミンD製剤と骨折リスクの関連性が検討されていますので,この関連性が示されなかったからといって,活性型ビタミンD製剤がPTHを抑制することにより高回転型骨病変を改善し,骨強度を回復する可能性まで否定されたことにはなりません。PTHが高い状況では,活性型ビタミンD製剤の骨折防止効果は現在もなお期待されるところであり,この点に関してはさらなる研究が必要と思います。

最後に,本研究をサポートして下さいましたArbor Researchの研究者,指導教官の深川雅史先生をはじめすべての共著者の先生方,DOPPSの参加施設の皆さま,ならびに協和キリン株式会社をはじめDOPPSの支援企業・財団の皆さまに心より感謝申し上げます。

駒場 大峰
医局サマーパーティーでの集合写真(2023年8月)

(東海大学医学部 腎内分泌代謝内科学・駒場 大峰)