日本骨代謝学会

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COPDマウスはNrf2の核内移行障害により皮質骨修復が遅延する

Delayed cortical bone healing due to impaired nuclear Nrf2 translocation in COPD mice
著者:Takayuki Nabeshima, Manabu Tsukamoto, Ke-Yong Wang, Yosuke Mano, Daisuke Arakawa, Kenji Kosugi, Takafumi Tajima, Yoshiaki Yamanaka, Hitoshi Suzuki, Makoto Kawasaki, Soshi Uchida, Eiichiro Nakamura, Kagaku Azuma, Akinori Sakai
雑誌:---
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 骨修復
  • Nrf2

鍋島 貴行
写真右側より、酒井昭典教授、著者、上司の塚本学先生です。

論文サマリー

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、筋骨格系合併症(骨粗鬆症、サルコペニア)を高率に合併することが知られていますが、その病態メカニズはわかっておらず、骨修復に与える影響もまた不明でした。COPDの全身合併症の病態には酸化ストレスの関与が示唆されており、COPD患者では全身の酸化ストレスマーカーの上昇と抗酸化能低下が報告されています。生体内の抗酸化機構において、中心的な役割を担うのがNuclear factor erythroid 2-related factor 2 : Nrf2と呼ばれるタンパクで、酸化ストレス状況下では細胞質内のNrf2が核内へ移行し、抗酸化タンパクをコードするAntioxidant Response Element: ARE遺伝子発現を誘導することで抗酸化能を発揮します。本研究では、エラスターゼを気管内投与する事で肺気腫を誘導したマウス(COPDマウス)の両側大腿骨遠位部にdrill holeを作成し、生体内の抗酸化機構のkey moleculesであるNrf2に着目して、皮質骨の修復過程の調査を行いました。12週齢C57BL/6Jマウス雄マウスに生理食塩水(saline群)とエラスターゼ (PPE群)をそれぞれ気管内投与し、投与後12週目で両側大腿骨に直径1.0mmのdrill孔を作成して(図1左)、μCTでdrill hole部の新生骨量を週毎に定量化したところ、PPE群ではdrill hole作成21日目のBV/TV・volumetric BMDが有意に低く、drill hole部の皮質骨修復が遅延していました(図1右)。骨組織標本でも、drill hole部の新生骨量及び骨形成パラメーターがPPE群で有意に低値を示しました。さらにこの骨組織標本の組織学的免疫染色を用いてタンパク発現を評価したところ、骨芽細胞の核内のNrf2及びNrf2により誘導される抗酸化タンパク(NAD(P)H-Plastoquinone oxidoreductase : NQO-1)の発現が、PPE群で低下していました。そこで、Nrf2賦活剤である Sulforaphane(SFN)を10日間皮下投与(それぞれSFN群、PPE+SFN群)したところ、PPE+SFN群では新生骨量・骨形成パラメーター及び骨芽細胞におけるNrf2の核内発現が改善していました。以上の結果から、COPDマウスでは骨形性能低下に起因する皮質骨修復遅延を呈し、その病態には骨芽細胞におけるNrf2の核内移行障害が関与していることが明らかになりました。本研究は、COPDマウスの骨修復能とその病態メカニズムを調査した初めての研究であり、COPDに関連する筋骨格系合併症の病態とその治療法確立の一助になると考えています。

鍋島 貴行
図1 drill hole部の骨微細構造解析

鍋島 貴行
図2 Sulforaphane介入実験

著者コメント

 今回の研究は、研究グループのリーダーである塚本 学 先生がCOPDに伴う筋骨格系疾患のモデル動物として報告されたことが始まりで、以降当教室ではこのモデルマウスを用いてCOPDに合併する筋骨格系疾患の病態メカニズム解明を目標に日々研究を行っています。本研究がBoneに掲載されたことは大変光栄なことであり嬉しく思うとともに、将来的にCOPD患者の筋骨格疾患の治療の一助になることを切に願っております。最後に、本研究に際しては、先述した我々研究グループのリーダであります塚本 学 先生に多大なるご尽力を賜り深く感謝申し上げます。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。(産業医科大学 整形外科・鍋島 貴行)