
高齢者脆弱性股関節骨折の予後予測におけるGNRIの有用性
著者: | T Tsutsui, T Fujiwara, Y Matsumoto, A Kimura, M Kanahori, S Arisumi, A Oyamada, M Ohishi, K Ikuta, K Tsuchiya, N Tayama, S Tomari, H Miyahara, T Mae, T Hara, T Saito, T Arizono, K Kaji, T Mawatari, M Fujiwara, M Takasaki, K Shin, K Ninomiya, K Nakaie, Y Antoku, Y Iwamoto, Y Nakashima |
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雑誌: | Osteoporos Int. 2023 Apr 17. doi: 10.1007/s00198-023-06753-3 |
- 脆弱性股関節骨折
- GNRI
- 骨粗鬆症
論文サマリー
股関節脆弱性骨折(FHF)は患者のQOLおよび生命予後を悪化させる疾患であり、高齢化に伴うFHFの増加は重要な課題である。FHF後の生存率や二次骨折、またそれらの危険因子に関する研究が行われているが、長期的に観察した研究はまだ少ない。また、術後の機能回復や生存率に栄養不良が悪影響を及ぼすことが報告されているが、長期予後との関連を示した報告はない。そこで、我々はreal worldでのFHF後の死亡率や二次骨折発生率とそれぞれの危険因子について、また栄養状態と生命予後の関連について検討した。栄養指標として、Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用いた。
平均観察期間は4.0年。入院時の平均年齢は82歳。FHF受傷後の5年生存率は62%、股関節二次骨折の5年発生率は22%であった。死亡の危険因子は、高齢、男性、低いGNRIスコア、併存疾患(悪性腫瘍、虚血性心疾患、認知症)、入院時および退院時の低いBIであった。続いて、GNRIを4つのリスク群に分類し [major risk(GNRI, <82)、moderate risk(82-92)、low risk(92-98)、no risk(>98)] 群別に5年生存率を調べたところ、35%(major risk)、56%(moderate risk)、76%(low risk)、75%(no risk)であり、major riskとmoderate risk群の患者は有意に生存率が低いことが明らかとなった(p<0.001)。また、股関節二次骨折の危険因子はBMIであった。
本研究より、GNRIはFHF後の長期予後を予測する新しい簡便な予後予測因子であることがわかった。
著者コメント
受傷後から年々生存率が低下するFHF。骨折を起こさないように予防するのはとても重要なことですが、完全に防ぐのは難しいのが現状です。もしも、受傷してしまった時に、身体機能や予後を少しでもいい方向に持っていけるよう普段から良好な栄養状態を保っておくことが大事であるということが今回の研究からわかりました。GNRIは体重および血清アルブミンを用いて算出できる簡便な栄養指標として評価されています。高齢の外来患者にGNRIを用いたスクリーニングを行い、スコアが低い患者に対しては栄養介入を積極的に行うなどすることができれば、それが高齢者の健康寿命を伸ばす一助になるのではないかと私は考えます。(九州大学整形外科・筒井 智子)