日本骨代謝学会

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未治療閉経後骨粗鬆症に対するロモソズマブ治療後の大腿骨骨量増加は、投与前血清P1NP値と相関する

Baseline serum PINP level is associated with the increase in hip bone mineral density seen with Romosozumab treatment in previously untreated women with osteoporosis.
著者:Masafumi Kashii, Takashi Kamatani, Yoshio Nagayama, Akira Miyama, Hideki Tsuboi, Kosuke Ebina
雑誌:Osteoporos Int. 2023 Mar;34(3):563-572.
  • ロモソズマブ
  • 閉経後骨粗鬆症
  • 大腿骨骨密度増加効果

柏井 将文
左写真:大阪大学医学部硬式テニス部所属時代(左端:筆者、左から2番目:蛯名耕介君)
右写真:平成12年度大阪大学医学部卒業式(左:筆者、右:蛯名耕介君)

論文サマリー

 ロモソズマブ(ROMO)は大幅な骨量増加作用を通して脆弱性骨折予防に優れた効果を発揮し、「骨折の危険性の高い重症骨粗鬆症例」に対する第一選択薬の位置を占める。Anabolic firstの考え方が浸透するようになり、腰椎・大腿骨骨量が共に重症骨粗鬆症領域にあり、かつ骨粗鬆症未治療症例の場合にはROMO投与がまず考慮される。第Ⅲ相大規模臨床試験(FRAME試験)から抽出した日本人女性データでは、12ヶ月間のROMO治療の結果、腰椎骨密度(BMD)は平均16.3%、大腿骨BMDは平均約5%の増加効果が報告された(Miyauchi A et al. J Bone Miner Metab 2021:39;278–288)。実臨床において大多数の骨粗鬆症未治療患者でROMO治療による腰椎骨量の大幅な増加を経験するが、大腿骨に関してはFRAME試験で報告されているような骨量増加効果が得られないことも多い。

 重症骨粗鬆症と初めて診断された骨粗鬆症未治療女性63名(平均年齢72歳)を対象に活性型ビタミンD併用下にROMOを12ヶ月間投与し、12ヶ月間の投与後の腰椎および大腿骨BMD変化を主要評価項目とする研究を我々は行った。12ヶ月間のROMO治療後の大腿骨BMD増加群(応答群)と増加不良群(不応群)の間で比較検討を行い、大腿骨BMD増加に寄与する因子を調査した。不応群は投与後12ヶ月の大腿骨頚部あるいは近位部どちらかのBMD増加率が3%未満と定義した。
 12ヶ月間のROMO投与によるBMD増加率は腰椎17.5%、大腿骨近位部4.9%、大腿骨頚部4.3%でいずれの部位も投与前と比べ有意な増加を認めた。3%以上の増加率を示した症例は、腰椎で98.4%、大腿骨近位部59.3%、大腿骨頚部54.5%であった(図1)。多変量解析の結果、大腿骨部での骨量3%以上の増加に関連する因子として治療開始前のP1NP値のみが抽出された(オッズ比1.028〔1.006-1.054〕、p=0.019)(図2)。大腿骨BMDに対する治療奏功のカットオフ値は投与前P1NP値53.7 µg/L(感度0.543・特異度0.923:AUC0.752)であった(図2)。以上より、閉経後骨粗鬆症未治療女性に対するROMO治療により得られる大腿骨骨量増加効果は投与前の骨形成マーカーP1NP値と相関し、投与前のPINP低値例ほど大腿骨BMDに対する治療反応性が乏しくなることが明らかとなった。本研究で得られた知見は、実臨床の場においてROMOの治療効果を予測する際に有益な情報となる。

柏井 将文
図1. 腰椎および大腿骨におけるロモソズマブ投与12ヶ月後の骨密度増加率

柏井 将文
図2. ROC曲線から算出したP1NPカットオフ値

著者コメント

 本研究は、大阪大学整形外科関連施設の先生方の御協力により得られた臨床データを集計し、主に私と責任著者の大阪大学 運動器再生医学共同研究講座の蛯名耕介君でデータ評価・解釈などを行いました。私と蛯名耕介君は共に1994年に大阪大学医学部に入学し、同じ硬式テニス部に所属していました。同じ整形外科の道に進み、私は脊椎脊髄外科を、彼はリウマチ外科を選択し、外科領域の専門は異なりますが、骨粗鬆症をはじめとする骨代謝疾患領域については切磋琢磨?しながら今日までやってきました。18歳の時から30年近い付き合いになりますが、今後も一緒に相談しながらこ臨床に役立つ研究を発信し続けたいと思います。最後になりますが、本研究の遂行にあたって御協力を頂きました多くの皆様に改めて御礼申し上げます。(独立行政法人国立病院機構 大阪南医療センター リハビリテーション科・柏井 将文)