日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

1st Author

TOP > 1st Author > 高倉 綾

AI駆動型蛍光骨形態計測を用いたPTHの薬理作用に伴う骨小腔-骨細管系拡張の評価

Expansion of the osteocytic lacunar-canalicular system involved in pharmacological action of PTH revealed by AI-driven fluorescence morphometry in female rabbits.
著者:Aya Takakura, Takanori Sato, Ji-Won Lee, Kyoko Hirano, Ryoko Takao-Kawabata, Toshinori Ishizuya & Tadahiro Iimura.
雑誌:Sci Rep. 2022 Oct 7;12(1):16799.
  • PTH
  • 骨細胞
  • AI駆動型骨形態計測

高倉 綾

論文サマリー

 骨粗鬆症は骨強度の低下を特徴とする加齢に伴う疾患である。特に腰椎や大腿骨頸部の骨折は、QOLやADLの低下と密接に関連しており、その予防と治療は高齢化社会で社会活動を維持するための重要な課題である。骨折は菲薄化して力学的強度が低下した皮質骨で多く発生するが、これまで骨組織の病態生理学的および薬理学的評価は主に海綿骨で評価されてきた。そこで、我々はマルチモード蛍光イメージングを用いた人工知能(artificial intelligence, AI)駆動型の骨形態計測法を独自に確立し、ヒトと同様の皮質骨リモデリング様式を持つウサギ骨組織を用いて、テリパラチド(hPTH1-34, TPTD)の投与頻度と皮質骨内リモデリングおよび皮質骨多孔化の関連を検討した。

 本研究では、健常雌ウサギに対してTPTDを週当たりの総投与量を140μg/kg/週とし、週1回、週2回、週7回に分割して4週間投与した。投与期間終了後に作製した脛骨骨幹部のVillanueva Bone染色MMA樹脂包埋研磨標本について、マルチモード蛍光イメージングを用いたAI駆動型骨形態計測を行った。

 その結果、TPTDの週7回投与によってハバース管と骨小腔-骨細管が著しく拡大し、骨髄腔に隣接する骨内膜面では幼若骨形成が認められたが、週1回投与や週2回投与では明らかな変化は認められなかった。これは、骨細胞がTPTDの薬理学的標的であること、TPTDの高頻度投与により拡大したハバース管が連結して皮質骨内部の多孔化につながっていること、TPTDの高頻度投与は骨細胞性の骨融解による皮質骨内の骨代謝を亢進させていることを示唆している。また、皮質骨内部でみられるハバース管の拡大と骨内膜側で観察される海綿骨状の幼若骨形成の対比のように、皮質骨多孔化は部位によって異なる様式で生じている可能性が考えられた。

高倉 綾
図1 ウサギ脛骨横断面の観察画像
(a) ウサギ脛骨の微分干渉コントラスト(DIC)および蛍光観察画像。スケールバー: 1.0 mm。(b) (a)の画像内の点線で囲まれた部分の拡大画像。白い矢印:皮質骨内の空隙、スケールバー:200 μmを示します。

高倉 綾
図2 3次元的にAI認識された骨小腔-小管系の画像
(a) 蛍光画像と、それに対応するAI認識された骨小腔および骨細管の画像。(b) 投与群ごとの皮質骨内層、外層、およびハバース層板の3次元的にAI認識された骨小腔の画像。スケールバー:25 μm。

著者コメント

 PTHは1980年代にはすでに骨組織に対する作用が報告されているような、古くからよく知られているホルモンです。PTHの活性断片であるテリパラチドは国内でも10年以上使われている骨粗鬆症治療薬ですが、その作用は十分解明されているわけではありません。今回の研究では皮質骨内の骨代謝にフォーカスをあて、テリパラチドが骨細胞に与える影響についてAIを用いた組織形態学的解析により明らかにしました。
 本研究は、北海道大学の飯村忠浩先生、李智媛先生の手厚いご指導のもと、佐藤孝紀先生を初め多くの方のご協力やサポートを受けて論文の形にすることができました。この場を借りて心から感謝申し上げます。(旭化成ファーマ株式会社、北海道大学大学院歯学研究院薬理学教室・高倉 綾)