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肝酸化ストレスを標的とした肝性骨異栄養症の改善

Targeting hepatic oxidative stress rescues bone loss in liver fibrosis
著者:Soichiro Sonoda, Sara Murata, Haruyoshi Yamaza, Ratih Yuniartha, Junko Fujiyoshi, Koichiro Yoshimaru, Toshiharu Matsuura, Yoshinao Oda, Shouichi Ohga, Tasturo Tajiri, Tomoaki Taguchi, Takayoshi Yamaza
雑誌:Mol Metab. 2022 Sep 13:101599
  • 慢性肝線維症
  • 肝性骨異栄養症
  • 活性酸素種

園田 聡一朗
左から、山座、園田、村田。

論文サマリー

 慢性肝疾患では、骨格系に代謝障害をもたらすが、その肝―骨連関のメカニズムは解明されていない。我々は、ヒト乳歯幹細胞(SHED)から分化した未成熟肝細胞様細胞(SHED-Hep)を四塩化炭素(CCl4)誘導性の慢性肝線維症モデルマウスに移植すると、肝線維化と抗炎症作用を発揮し、肝再生を促すことを報告している。そこで、肝性骨異栄養症に対する有効な治療メカニズムを明らかにすることを目的とし、四塩化炭素(CCl4)誘導性の慢性肝線維症モデルマウスにSHED-Hepおよびスタニオカルシン1(STC1)遺伝子をsiRNA処理したSHED-Hep(siSTC1-SHED-Hep)を経脾的にCCl4誘導モデルマウスに投与し、活性酸素種(ROS)、海綿骨密度、破骨細胞活性を解析する研究を行なった。CCl4誘導モデルマウスでは、肝細胞障害による活性酸素種(ROS)の産生が上昇していた。その長骨骨髄では、インターロイキン17(IL-17)と腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー11A(TNFRS11A)の発現の上昇とともに、破骨細胞活性が上昇し、海綿骨密度が低下していた。SHED-Hep移植では、CCl4誘導モデルマウスの肝では線維化の抑制とともにROS産生が減少し、骨髄におけるIL-17とTNFRS11Aの発現が抑制されると共に、破骨細胞活性が抑制されていた。一方、siSTC1-SHED-Hep移植では、SHED-Hepの移植効果(肝線維化の抑制、肝ROS産生の抑制、海綿骨密度の回復、破骨細胞活性の抑制)が全て打ち消された。今回の知見により、慢性肝線維症による産生される肝ROSが肝性骨異栄養症を発症させる原意となることを発見し、肝ROSを標的とした新しいアプローチが、肝性骨異栄養症の治療となりうることを明らかとした。

園田 聡一朗
図1: 本研究のスキーム

著者コメント

 我々は、これまでSHEDあるいはSHED-Hepの移植による、慢性肝線維症に対する肝再生治療効果を報告してきました(Yamaza et al., 2015; Fujiyoshi et al., 2019; Iwanaka et al., 2020; Yuniartha et al., 2021)。本研究により、SHED-Hep移植が、肝線維症における肝再生のみならず、肝-骨連関を介して肝性骨異栄養症に対しても有効な治療法であることを新たに示すことができました。我々は、本研究で示した治療学的アプローチが様々な肝疾患やそれに伴う二次的障害に対する有効な治療法の開発を実現させる可能性があると考えています。(九州大学歯学研究院分子口腔解剖学分野・園田 聡一朗)