日本骨代謝学会

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Stat5-Duspは破骨細胞による骨吸収活性を抑制する

Bone resorption is regulated by cell-autonomous negative feedback loop of Stat5-Dusp axis in the osteoclast.
著者:Hirose J, Masuda H, Tokuyama N, Omata Y, Matsumoto T, Yasui T, Kadono Y, Hennighausen L, Tanaka S.
雑誌:J Exp Med. 2014 13;211(1):153-63
  • 破骨細胞
  • Stat5
  • Dusp

廣瀬 旬

論文サマリー

Stat(signal transducers and activators of transcription)はJak/Stat pathwayを通じて、様々なcytokine刺激を細胞内で伝達する転写因子である。その中でもStat5は血球系細胞を中心とする多くの細胞において多様なcytokine刺激のシグナル伝達に関与することが報告されているが、血球系細胞に由来する破骨細胞におけるStat5の機能は明らかにされていない。本研究では破骨細胞特異的Stat5欠損マウスを作成し、破骨細胞におけるStat5の機能を検討した。Stat5 floxedマウスとCathepsin K-Creマウスを交配させ、破骨細胞特異的Stat5欠損(Stat5 cKO)マウスを作出して表現型の解析を行った。Stat5 cKOマウスは対照群と比較してmicro CTおよびDXAにおいて骨密度の低下が認められた。血中の骨吸収マーカーはStat5 cKOマウスで有意に上昇しており、骨形態計測では破骨細胞数に差はないが、破骨細胞面の増加を認めた。Stat5 をノックアウトさせた骨髄細胞にM-CSFおよびRANKL刺激を行って破骨細胞分化を誘導したところ、対照と比較して分化に差はみられなかった。Stat5ノックアウト破骨細胞は対照と比較して生存能に差はなかったが、骨吸収能が亢進していた。逆に、アデノウイルスを用いてStat5を強制発現させた破骨細胞では骨吸収能は低下していた。Stat5ノックアウト破骨細胞におけるシグナル伝達を検討したところ、MAPK、特にErk1/2の活性が亢進していることが明らかとなった。Stat5ノックアウト破骨細胞においてDNAマイクロアレイ解析を実施してMAPKのリン酸化に関与する遺伝子群に着目すると、MAPKの脱リン酸化を担うDusp(dual specific phosphatase)1,2の発現が低下していた。また、Stat5の過剰発現にてDusp1,2の発現が上昇することを確認した。Stat5の活性化を誘導することが知られているサイトカインで破骨細胞を刺激してStat5の活性化を調べると、IL-3刺激によってStat5のリン酸化および核移行が誘導されることが分かった。野生型の破骨細胞にIL-3を加えると骨吸収が抑制されたが、Stat5ノックアウト破骨細胞ではこのような抑制がみられなかった。さらに、破骨細胞をRANKLにて刺激すると、破骨細胞内でIL-3の発現が誘導されることが明らかとなり、IL3-Stat5-Duspが破骨細胞機能に対するnegative feedback loopとして働いている可能性が示唆された。

廣瀬 旬

著者コメント

私は11年間臨床に携わったのちに大学院に進学いたしましたが、本研究は大学院生として行った仕事です。大学院入学までは基礎研究とは全く縁のない生活を送っておりましたので随分と遅いデビューであり、最初は基本的なことを学ぶのにも大変苦労いたしました。このような中で何とか一つの成果として論文発表することが出来たのは田中教授をはじめ多くの先生方のご指導のおかげであり、心より感謝いたしております。現在はまた臨床中心の生活に戻っておりますが、本研究を通じて基礎研究の素晴らしさ、面白さを知ることが出来ましたので、今後も何らかの形で研究には関わっていきたいと思っております。(東京大学医科学研究所附属病院 関節外科・廣瀬 旬)