日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

1st Author

TOP > 1st Author > 宮本 健史

ビタミンDアナログであるED71は破骨細胞のHIF1α蛋白を標的とする

The Vitamin D Analogue ED71 but Not 1,25(OH)2D3 Targets HIF1α Protein in Osteoclasts.
著者:Sato Y, Miyauchi Y, Yoshida S, Morita M, Kobayashi T, Kanagawa H, Katsuyama E, Fujie A, Hao W, Tando T, Watanabe R, Miyamoto K, Morioka H, Matsumoto M, Toyama Y, Miyamoto T.
雑誌:PLoS One. 2014 Nov 6;9(11):e111845.
  • 破骨細胞
  • ビタミンD3
  • HIF-1α

宮本 健史

論文サマリー

ビタミンDは長管からのカルシウム吸収に重要な役割を担い、国内では骨粗鬆症の治療薬としてプロドラッグが承認を受け、臨床の現場で使用されている。しかし、これら活性型のビタミンDとして効能を発揮する製剤を投与しても、破骨細胞の活性を抑えたり、骨密度を増加させたりする効果は見られなかった。一方、近年新たに承認されたエルデカルシトールは、プロドラッグであるアルファカルシドールとは異なり、明らかな骨吸収抑制と骨密度の増加効果を発揮する。しかし、どのようにしてこの差が生じるのかは不明であった。
我々は活性型のビタミンDである1,25(OH)2D3 (以下1,25D)は、骨芽細胞様細胞と破骨細胞前駆細胞との共存培養系では、骨芽細胞様細胞に対してRANKLの発現誘導とopgの発現抑制により、破骨細胞分化を誘導するにも関わらず、M-CSFとRANKLによる破骨細胞前駆細胞からの非共存培養系ではIFNβの発現誘導からNFATc1の発現抑制を介して、破骨細胞分化抑制に作用することを以前報告していた。本論文でも、確かに1,25DはM-CSFとRANKLによる破骨細胞前駆細胞からの破骨細胞分化誘導を抑制することを確認したが、エルデカルシトール(以下ED71)にはその活性を認めるものの、1,25Dに比べると弱く、患者においてED71の方が1,25Dより破骨細胞活性を強く抑制することは、このin vitroの系では説明できない。ED71は1,25Dが破骨細胞分化を抑制する機序であるIFNβの発現誘導やNFATc1の発現抑制も1,25Dに比べると弱く、また、1,25Dはc-Fos蛋白の抑制により破骨細胞分化を抑制することも報告されているが、ED71はc-Fos蛋白の抑制も1,25Dより弱かった。つまり、ここまでの解析では、ED71の1,25Dに対する破骨細胞抑制の優位性は見いだせていない。
そこで、最後に破骨細胞のHIF1αの抑制能を解析することとした。我々は近年、エストロゲンが破骨細胞のHIF1αを抑制すること、閉経によるエストロゲン欠乏によりHIF1αが破骨細胞に蓄積し、破骨細胞の活性化かから骨量を減少させることを見いだしていた。興味深いことに、ED71には破骨細胞のHIF1αの抑制を認めるものの、1,25Dにはその活性がないことが明らかとなり、ここに初めてED71の方が破骨細胞抑制において1,25Dより優位な活性をもつ項目を見いだすことができた。

著者コメント

本研究は、もともと1,25DとED71の破骨細胞抑制における生物活性の違いやその根拠をみようと少しずつ始めていたものですが、骨粗鬆症患者にみられるようなED71に優位な破骨細胞の抑制効果がなかなか見えずにいました。一方で、別に進めていたプロジェクトでは、エストロゲンが破骨細胞のHIF1αを抑制することが明らかになり、ひょっとして、とHIF1α抑制能を比較したところ、ED71に優位な抑制を観察することが出来ました。この現象は、骨粗鬆症治療におけるED71の破骨細胞抑制活性の、少なくとも一部を説明し、また逆に、我々が別に解析していた破骨細胞のHIF1αが骨粗鬆症治療の標的である、とした知見を後押しするものとなりました。(慶應義塾大学医学部整形外科・宮本 健史)