日本骨代謝学会

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尿毒症患者における血清マグネシウム濃度は副甲状腺ホルモン濃度の独立した関連因子である

Significance of serum magnesium as an independent correlative factor on the parathyroid hormone level in uremic patients.
著者:Ohya M, Negi S, Sakaguchi T, Koiwa F, Ando R, Komatsu Y, Shinoda T, Inaguma D, Joki N, Yamaka T, Ikeda M, Shigematsu T.
雑誌:J Clin Endocrinol Metab. 2014 Jun 17:jc20134396.
  • マグネシウム
  • 副甲状腺ホルモン
  • 尿毒症

大矢 昌樹

論文サマリー

背景と目的
副甲状腺ホルモン(PTH)はミネラル代謝に重要な因子であり、慢性腎臓病における骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)は腎不全患者において非常に重要な問題である。CKD-MBDに対するPTH異常、リン(P)異常、カルシウム(Ca)異常の影響は現在まで、多くの研究がなされ、その役割が解明されつつある。しかしながら、マグネシウム(Mg)とCKD-MBDとの関連に関しての報告は非常に少ないのが現状である。本研究では透析導入直前の尿毒症状態でのCKD患者における血清Mg濃度と血清PTH濃度との関連を検討した。

対象
日本国内9施設で2006年1月から2011年12月までに透析が開始されたCKD患者2441名中、除外項目に該当しない1231名を対象とし(Fig.1)、尿毒症状態にある透析開始直前の血清Mgと血清PTH濃度およびその他の臨床的バラメーターおよび薬剤との関連を検討した。

結果
患者背景(Table1)では、平均血清Mg濃度は2.2±0.5mg/dLであり、高Mg血症は663名(53.9%)の患者に認められ、eGFR<5mL/minで上昇する傾向が認められた(Fig.1)。

大矢 昌樹
(Table1)

大矢 昌樹
(Fig.1)

Intact-PTH(iPTH)濃度を中央値にて2群に分割し検討した結果では、血清Mgは有意にiPTH高値群において低いことが認められた(2.3±0.5 vs 2.1±0.5 P<0.01)(Table 2)。

大矢 昌樹
(Table2)

さらに血清Mg濃度を中央値にて2群に分割し検討した結果ではiPTH濃度は有意にMg高値群において低いことが認められた(277.9±195.9 vs 321.9±203.7pg/mL)(Table 3)。

大矢 昌樹
(Table3)

iPTH濃度に関連する因子の検討として重回帰分析では、血清Mg濃度は独立した因子であることが認められた(Table 4)。

大矢 昌樹
(Table4)

結語
透析直前の尿毒症患者では血清Mg濃度は上昇する傾向がある。血清Mg濃度はiPTH濃度と有意な関連性が認められ、PTH調整に関連する他の因子とは独立してその関連性が認められた。このことは、Mgが尿毒症状態でPTHを調整する因子の一つであるかもしれない。

著者コメント

MgはCKD-MBDに重要な関与が疑われ、近年、基礎研究、臨床研究においての報告がなされてきているが、未だ不明な点も多い。また、透析期になると、血清Mg濃度は、透析液のMg濃度に依存することが報告されており、真の尿毒症状態での検討には、非透析尿毒症状態での患者データでの検討が重要であると考えられた。我々は、国内9施設で2006年1月から6年間に腎不全のために透析が開始されたCKD患者中、除外項目に該当しない1231名を対象とし、透析開始直前のパラメーターを用い検討を行った。このなかで、MgはiPTHに関連する他の因子に独立して有意な因子と認められた。このことは今後のCKD-MBD診療において、血清カルシウム濃度、血清リン濃度以外にも血清Mg濃度にもより注目した管理目標が必要になる可能性があることが示唆された。(和歌山県立医科大学・大矢 昌樹)