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Tbx1 遺伝子欠損マウスの骨格形態異常はヒト鎖骨頭蓋異骨症の骨格と酷似する

Loss of Tbx1 induces bone phenotypes similar to cleidocranial dysplasia
著者:Noriko Funato, Masataka Nakamura, James A. Richardson, Deepak Srivastava, and Hiromi Yanagisawa
雑誌:Hum Mol Genet, 2015 Jan 15; 24(2):424-35
  • Tbx1
  • Runx2
  • 22q11.2 欠失症候群

船戸 紀子

論文サマリー

 T-box型転写因子をコードするTBX1は、新生児4000人に1人に認められる 22q11.2 欠失症候群 (DiGeorge/ Velo-cardio-facial 症候群) の疾患遺伝子候補の一つである。同症候群では、胸腺形成不全、心血管異常の他に、小顎症、耳介の低位・変形、両眼解離、口蓋裂を認める。本論文にて我々は、Tbx1 遺伝子欠損マウス (Tbx1−/−) の骨格形態異常が、RUNX2遺伝子の常染色体優性遺伝疾患であるヒト鎖骨頭蓋異骨症 (CCD) およびRunx2 遺伝子ヘテロ欠損マウス (Runx2+/−) の骨格と酷似していることを報告した。Tbx1−/− マウスには、低身長、泉門の開存、鎖骨の低形成、頬骨弓・舌骨の低形成、胸骨剣状突起の癒合不全を認める。組織特異的にTbx1 遺伝子を欠損させたところ、骨軟骨幹細胞特異的に Tbx1 遺伝子を欠損したマウス (Tbx1OPKO) 、および、中胚葉特異的に Tbx1 遺伝子を欠損したマウス (Tbx1MKO) は、部分的に Tbx1−/− マウスと似た骨格所見を示した. これまで神経堤において Tbx1 の発現は報告されていなかったが、神経堤特異的に Tbx1 遺伝子を欠損したマウス (Tbx1NCKO) において、舌骨体の形態異常および出生後の死亡が認められた。また、Tbx1 の発現が神経堤由来舌骨において認められたことから、Tbx1が神経堤由来組織の発生においても機能していることが明らかとなった。一方、Tbx1 のLineage analysisから、頭蓋骨の骨軟骨原基にもTbx1 の発現が確認された。in situ hybridization により、Tbx1−/− マウスの頭蓋骨においてRunx2 の発現領域が狭小化していることがわかった。さらにin vitroにおいて、細胞の種類によってはTbx1 の強制発現によりRunx2 の発現が誘導され、マイルドながらTbx1Runx2プロモーターを活性化することが分かった。以上のことから、Tbx1 が中胚葉および神経堤由来骨芽細胞および骨格の発生に関与しているといえる。ヒトにおいて劣性遺伝を示すCCD も報告されていることから、TBX1 遺伝子の変異/欠損がCCD様の骨格形態異常を引き起こす可能性もあるのではないだろうか。

船戸 紀子

著者コメント

 アメリカにある柳沢裕美先生のラボに留学中、Tbx1 遺伝子欠損マウスの口蓋裂および骨格の研究を開始いたしました。しかし、他の研究テーマの論文が受理されたところでTbx1の研究は一旦中断し日本に帰国いたしました。その後、動物実験に必要十分な科研費をいただけることが決まってから、アメリカよりTbx1コンディショナルノックアウトマウスを送って頂き、続きを完成させることができました。この場をおかりして、お世話になりました柳沢先生をはじめ研究室の皆様に厚く御礼申し上げます。(東京医科歯科大学 医歯学研究支援センター・船戸 紀子)