
DNA/プロタミン複合体ペーストを埋入したラット骨欠損部細胞の骨再生能
著者: | Masako Toda, Jun Ohno, Yosuke Shinozaki, Masao Ozaki, Tadao Fukushima |
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雑誌: | Bone 2014 Jul 19; 67: 237-245 |
- DNA/プロタミン複合体
- 骨再生医療
- スキャフォールド
論文サマリー
骨再生組織工学において、骨誘導能を有するスキャフォールドの開発は重要である。本研究は、ラット頭蓋骨欠損モデルにおけるDNA/プロタミン複合体(DP複合体)の骨再生能を検討した。さらに、DP埋入欠損を置換した結合組織から、間葉系細胞(DP細胞)をoutgrowth培養して、同細胞群のin vitroにおける骨芽細胞への分化誘導を試みた。DP複合体は、DNAと硫酸プロタミンの反応産物より作製した。骨欠損モデルは、成体ラット頭蓋骨中央部に、8 mmのcritical-sized欠損を作製し、非埋入群をコントロールとして、経日的に観察した。欠損部での骨修復状態は、マイクロCT的,組織学的および免疫組織化学的検索にて評価した。これらの検索により、非埋入群と比較して、DP複合体埋入群は、骨再生の促進が認められ、埋入後3ヶ月では、欠損部の大部分が新生骨により置換されていた。骨誘導培地にて培養したDP細胞は、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性およびアニザリン・レッド染色の亢進がみられた。さらに、同細胞では、骨関連遺伝子(RUNX-2, ALP, osteopontinおよびosteocalcin)発現の増強が認められた。In vitroでの結果から、骨欠損部を置換した結合組織中には、前骨芽細胞様細胞が豊富に含有されていることが推測された。以上の結果から、DP複合体は、頭蓋骨欠損部での骨再生を促進することが明らかとなった。今後、DNAを基盤とした骨誘導性スキャフォールドの開発が期待される。
著者コメント
福岡歯科大学・再生医学センターでは、福島忠男教授を中心として、サケ白子から抽出されたDNA(マルハニチロ株式会社より提供)を用いて骨再生を促進させる材料開発を行っています。今回のDP複合体による論文は、これまでセンターで蓄積してきたDNAデータを大学院の戸田雅子さん(現在、ミシガン大留学中;写真中央)が引き継ぎ、outgrowth培養には泣かされながらも、粘り強く実験を繰り返した結果が形となりました。しかしながら、この論文には、名前を連ねることが出来なかった多くのメンバー蓄積してくれた基礎データが生かされており、心より感謝しています。(福岡歯科大学・大野 純)