日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 三島 誉史

新規に開発された超音波骨計測装置により評価された橈骨皮質骨厚減少はeGFR60mL/min/1.73m2未満2型糖尿病患者の脊椎骨折の危険因子である

Decreased Cortical Thickness, as Estimated by a Newly Developed Ultrasound Device, as a Risk for Vertebral Fracture in Type 2 Diabetes Mellitus Patients with eGFR of Less than 60 mL/min/1.73 m2
著者:Takashi Mishima, Koka Motoyama, Yasuo Imanishi, Kae Hamamoto, Yuki Nagata, Shinsuke Yamada, Nagato Kuriyama, Yoshiyuki Watanabe, Masanori Emoto, Masaaki Inaba
雑誌:Osteoporos Int. 2015 Jan; 26(1):229-36
  • 皮質骨
  • 糖尿病
  • CKD

論文サマリー

 2型糖尿病患者では、これまでの骨塩定量装置で測定不能な皮質骨骨粗鬆症が骨折関連因子として注目されている。特に慢性腎臓病3期以降(eGFR60 mL/min/1.73m2未満)では、副甲状腺ホルモン上昇による皮質骨の菲薄化が、重要な骨折関連因子となる可能性があるが明らかにされていない。新規に開発された超音波骨計測装置で橈骨遠位端の皮質骨厚が測定可能となり、非侵襲的な超音波法による骨指標の評価が期待される。本研究では2型糖尿病における皮質骨厚と脊椎骨折との関連を、腎機能別に明らかにすることを目的とした。 対象は当院入院2型糖尿病患者173例(平均年齢62.3歳、男性/女性:98/75)。慢性腎臓病5期、外傷骨折歴、骨代謝に影響する薬剤内服歴のある患者は除外した。超音波骨計測装置にて橈骨遠位端の海綿骨骨密度(TrBMD)、海綿骨弾性定数(EMTb)、皮質骨厚(CoTh)を測定し、X線法で評価した脊椎骨折との関連を横断的に検討した。
登録患者173例中39例(22.5%)に脊椎骨折を認め、骨折患者は非骨折患者に比し、TrBMD、EMTb、CoThいずれも低値を示した。eGFR60 mL/min/1.73m2以上の患者集団では、骨指標のうちEMTbが骨折群で有意に低値を示した。eGFR60 mL/min/1.73m2未満の患者集団では、whole PTHやintact OCが骨折群で高い傾向にあり、whole PTHはeGFR60 mL/min/1.73m2以上の患者のwhole PTHに比し高値であった。eGFR60 mL/min/1.73m2未満の患者の超音波骨計測装置で測定された骨指標はいずれも骨折群で低値を示した。eGFR60 mL/min/1.73m2以上の患者において、年齢、性別、糖尿病罹病期間、TrBMD、EMTb、CoThを独立変数として多変量解析した結果、骨指標のうちEMTbのみが脊椎骨折に対する有意な関連因子であった。一方、eGFR60 mL/min/1.73m2未満の患者における解析では、骨指標のうちCoThのみが脊椎骨折に対する有意な関連因子であった。

 以上から、本研究では2型糖尿病においてeGFR60 mL/min/1.73m2未満ではCoThが脊椎骨折に対する重要な関連因子であることを新たに示し、CoThが骨脆弱性の有用な指標として期待される。

著者コメント

 私は初期研修医の頃から糖尿病に興味があり、研修修了後に稲葉雅章教授率いる代謝内分泌病態内科学の門を叩きました。稲葉教授と相談のうえ、糖尿病と骨に関する研究を行うことになりましたが、骨の分野は私にとって未知との遭遇でした。しかし、稲葉教授、元山宏華先生の御指導のもと、着実に研究を進めることができ、自分の集めたデータに愛着が生まれ、未知の分野であった骨の分野にも日々興味が膨らむ自分に驚いております。糖尿病患者の集団はそれぞれがheterogeneousで複雑ですが、この度の報告が、糖尿病患者の骨脆弱性についての新たな理解の一助となることを期待しています。また、私自身この度の報告に満足することなく、さらに研究を発展させられるように邁進する所存です。本研究に御助力頂きましたすべての方々へ心より感謝申し上げます。大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学・三島 誉史)