日本骨代謝学会

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ビタミンK依存性Gla化蛋白オステオカルシンはテリパラチドの骨治癒促進効果に影響する

Vitamin K-dependent carboxylation of osteocalcin affects the efficacy of teriparatide (PTH(1-34)) for skeletal repair.
著者:Shimizu T, Takahata M, Kameda Y, Hamano H, Ito T, Kimura-Suda H, Todoh M, Tadano S, Iwasaki N.
雑誌:Bone. 2014 Jul;64:95-101.
  • ビタミンK
  • テリパラチド
  • 骨折治癒

清水 智弘

論文サマリー

 テリパラチド(以下PTH1-34)には,全身性の骨量増加作用だけでなく局所の骨治癒促進効果がある.しかし,このような補助療法をもっとも必要とする高齢者や合併症をもつ患者でもPTH1-34が十分な効果を発揮するかどうかは重要な関心事である.ビタミンK依存性グラ化タンパクのひとつであるオステオカルシンは骨基質の石灰化に関与することから、ビタミンK欠乏あるいはWarfarinによるビタミンKの機能不全がある場合にはPTH1-34は十分な効果を発揮できない可能性がある.そこで本研究では,ビタミンKの充足度によってPTH1-34による骨治癒促進効果が影響をうけるかどうかラット骨切モデルを用いて検討した.

 方法は12週齢の雌SDラットを用いて, 大腿骨骨切りモデルを作成し, 1.0mmのチタン製ワイヤーで髄内釘固定した.これらのラットを4群(Vehicle群,PTH1-34+Vehicle群,PTH1-34+Vit.K2群,PTH1-34+Warfarin群)に分け,それぞれPTH1-34(30μg/kg/day)の連日皮下投与を行い, 経口投与で溶媒, Vit.K2(30mg/kg/day, ビタミンK拮抗剤Warfarin(0.4mg/kg/day)を週3日おこなった.マイクロCT撮影と血清オステオカルシン(Gla-OCおよびGlu-OC)濃度測定を2週毎に行い,最終的に術後8週で安楽死させて骨癒合状態をX線学的, 組織学的,力学的に評価した.

 結果はこれまで報告されているとおりPTH1-34投与によって仮骨密度は上昇し,力学的強度も増加した.PTH1-34投与により,血清Gla-OCもvehicle群の約5倍増加し,高いレベルが術後6週まで維持された.PTH1-34にWarfarinを併用すると,Gla-OC増加効果は消失し,力学的強度増強作用も減弱した.Vit.K2併用群では力学的強度の増強傾向はあったものの,有意な差はみられなかった.これは餌に十分なビタミンKが含まれていたためと考えられた.しかし,WarfarinやVit.K2併用の有無に関わらずPTH1-34治療群において,術後2,4,6週の血清Gla-OC濃度が仮骨の力学的強度と正の相関を示したことから, PTH1-34による骨治癒促進作用にはビタミンK依存性グラ化蛋白オステオカルシンの充足が重要であることが示された.

著者コメント

 当科では常に臨床につながる研究を行うように意識づけされています.整形外科医として骨折は最も一般的であり,この研究テーマを与えられた際には当科の研究方針にダイレクトに合致する印象を受けました.実際行うとなかなか苦労の連続で約半年間毎日PTH製剤をうつ日々を続けました.特に北海道の冬の休日の大学構内は除雪が不十分で何度も雪に埋まりそうになりながら投与を続けておりました.幸いにしてこのような形で世に出すことができて大変うれしく思っております.これも指導医の高畑雅彦先生の熱い指導と自由に基礎研究をやらせていただいている岩崎倫政教授のおかげだと思っております.今後も整形外科医として臨床を常に意識しながら骨の研究に邁進していきたいと思います。(北海道大学医学部整形外科・清水 智弘)