日本骨代謝学会

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High prevalence of hypovitaminosis D in pregnant Japanese women with threatened premature delivery

著者:Shibata, Megumi; Suzuki, Atsushi; Sekiya, Takao; Sekiguchi, Sahoko; Asano, Shogo; Udagawa, Yasuhiro; Itoh, Mitsuyasu
雑誌:J Bone Miner Metab. 2011 Sep;29(5):615-20
  • ビタミンD
  • 妊娠
  • 切迫早産

四馬田 恵

論文サマリー

 ビタミンDは食事に由来するビタミンDと皮膚で紫外線により合成が促進されるビタミンDを基質として、まず肝臓で25水酸化ビタミンD(25OHD)となる。25OHDは、その後、腎近位尿細管で1α水酸化酵素により活性型ビタミンD(1α,25水酸化ビタミンD3)となる。ビタミンD活性化の律速段階は、ビタミンD 1α水酸化であるが、その濃度は血清カルシウム濃度ならびに副甲状腺機能に依存して変化するため、ビタミンD貯蔵量を評価するには適さない。一方、血清25OHD濃度は、半減期が60日と長く、また急性の血清カルシウムイオン濃度に影響されないため、体内のビタミンD貯蔵量を最も適切に反映すると考えられている。妊娠期及び授乳期には母体のカルシウム代謝は大きく変動する。胎児の骨は母親から胎盤を通じて供給されるカルシウムを必要とする。そのため、妊娠中の母親は多くのカルシウムが必要である。満期産で生まれた新生児の骨には約25~30 gのカルシウムが含まれ、大部分は出産前の3か月間で獲得される。胎児のカルシウム蓄積は妊娠20週の約50 mg/日から妊娠35週の最大約 330 mg/日まで増加すると考えられており、授乳期(乳汁に約250 mg/日のカルシウムが失われる)まで、母親のカルシウム需要の高さは続く。今回我々は母体のビタミンD欠乏が、母体の骨カルシウム代謝ならびに妊娠中の合併症と関連するか否かについて検討した。対象は東海地区に在住で、当院に入院もしくは外来受診した妊娠30週以降の妊婦93人である。これらの妊婦が定期受診した際に調査を行った。血清25OHD値は冬の終わりに最も低く、夏の終わりに最も高い傾向を示したが、全体に低値であった。血清25OHD値は血清BAP値、NTX値、リン値とは負の相関をみとめたが、血清カルシウム値とは相関を認めなかった。新生児の臨牀合併症のある母親(10人)の血清25OHD濃度は、合併症のない母親の25OHD濃度と有意差を認めなかった。同様に、母体の合併症と血清25OHD値の間にも関連を認めなかった。切迫早産を合併した母親の血清25OHD値(11.2 ±3.2 ng/ml) は、それ以外の母親の値 (15.2 ±5.1 ng/ml) に比べ有意に低値を示した。妊娠中の低ビタミンD血症が、妊娠中の骨カルシウム代謝に影響を与えることと、切迫早産などの周産期異常と関連する可能性が示唆された。

著者コメント

 相対的ビタミンD欠乏については、筋骨格系以外の組織での疾患発生の素因となることが報告されています。本研究では、胎児へのカルシウム供給量が増す妊娠後期にスポットをあてて、ビタミンD欠乏と周産期異常の関係を調査しました。実際の研究の際には、分娩や切迫早産を機に来院された際に血清を収集することが多かったため、来院情報の把握が難しく、産婦人科との連携を緊密にすることに心を配りました。私は大学卒業後ある程度年数が経ってから大学院に入学し、研究活動に取り組みましたが、臨床的経験を積んでから研究生活に入ることには、臨床の視点を研究に活かせる利点もあります。今後も女性としての視点も重視しながら、研究と臨床に力を尽くしていきたいと考えています。(藤田保健衛生大学 内分泌・代謝内科・四馬田 恵)