日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 日浅 雅博

多発性骨髄腫においてPim-2キナーゼは骨髄腫の腫瘍進展と骨喪失に対する重要な治療標的である

Pim-2 kinase is an important target of treatment for tumor progression and bone loss in myeloma.
著者:Hiasa M, Teramachi J, Oda A, Amachi R, Harada T, Nakamura S, Miki H, Fujii S, Kagawa K, Watanabe K, Endo I, Kuroda Y, Yoneda T, Tsuji D, Nakao M, Tanaka E, Hamada K, Sano S, Itoh K, Matsumoto T, Abe M.
雑誌:Leukemia. 2014 May 2. Doi: 10.1038/leu.2014.147. [Epub ahead of print]
  • Pimキナーゼ
  • 多発性骨髄腫
  • 骨形成

論文サマリー

 多発性骨髄腫は、骨髄微小環境に依存した進展を示し、特徴的な広範な骨破壊性病変を来す。このような骨病変部内では、骨髄腫細胞は骨髄微小環境と密接な相互作用を営み、骨を破壊しつつ腫瘍が進展するという悪循環を形成している。我々は、骨病変部骨髄微小環境との相互作用により、骨髄腫細胞で大きく発現が亢進する因子としてセリンスレオニンキナーゼPim-2を同定した。これまでに、Pim-2は、従来の抗腫瘍薬が標的にできず治療抵抗性の原因因子となっていること、またPim阻害薬により骨髄腫細胞に著明な細胞死が誘導されることを報告し、Pim-2が骨髄腫の重要な治療標的の候補であることを示した(Asano, et al. Leukemia, 2011)。
 骨髄腫では骨吸収の亢進とともに骨形成が抑制され、骨破壊とともに急速に骨喪失が起こる。しかしながら、骨髄腫骨病変部に骨を再生させる有効な治療法は未だ開発されていない。骨髄腫では種々の骨形成抑制因子が過剰産生されており、これらを介して骨髄間質細胞からの骨芽細胞分化が抑制されている。本研究で、これらの骨髄腫由来骨形成抑制因子により骨芽細胞前駆細胞である骨髄間質細胞にもPim-2が発現誘導されることを新たに見出した。骨髄間質細胞にPim-2を過剰発現させると骨芽細胞への分化がみられなくなり、逆に骨髄間質細胞にPim阻害薬の添加やsiRNAによるPim-2発現抑制を行うと、骨髄腫細胞の共存や骨髄腫で報告のある各種の骨形成抑制因子の添加下でも骨髄間質細胞からの骨芽細胞分化抑制が回復した。従って、骨髄腫においてPim-2が骨芽細胞分化を負に制御する共通の媒介因子として作用していることが考えられた。また、Pim阻害薬の前処置により、BMP-2による前骨芽細胞のSmad1/5およびp38MAPKのリン酸化ならびにBMP-2の標的分子であるOsterixの発現誘導が増強したことより、Pim阻害薬の骨形成誘導作用は主としてBMP-2の骨形成シグナルの増強によりもたらされていると思われた。次いで、骨病変を形成させた骨髄腫動物モデルを作成し、Pim阻害薬の治療効果を検討した。コントロール群では骨破壊病変が形成され、腫瘍が骨内外に進展していたが、Pim阻害薬による治療群では著明な抗腫瘍効果とともに骨破壊抑制効果を認めた(図)。

日浅 雅博
骨髄腫細胞脛骨骨髄内移植モデルに対し、Pim阻害薬の投与を行った後の脛骨マイクロCT画像。
Pim阻害薬投与群では骨破壊抑制効果を認める。

これらの結果よりPim阻害薬が有望な骨髄腫の治療薬と考えられたため、水溶性を向上し利便性に優れた新規誘導体を創出した。これら新規誘導体の治療効果を検討し、有望な候補薬として12a-OHを選出し報告した。

著者コメント

 新規薬の登場により骨髄腫患者の予後は大きく改善されていますが、骨髄腫は未だ治癒が困難であり、これまでと異なる機序の抗腫瘍薬の開発が求められています。Pim阻害薬は、抗腫瘍作用に加え骨形成作用を有するため、QOLの改善の観点からも興味深い新規薬になる可能性があると思われます。本研究は本学薬学部との共同研究であり、多大なご協力を頂きました。また、多くの方々の支えあってこその研究成果と、感謝しております。骨代謝におけるPimキナーゼの役割についてはこれまでに検討がないため、今後骨髄腫におけるPimキナーゼを介する骨芽細胞分化の抑制の詳細な分子機序の解析を糸口に骨代謝におけるPimキナーゼの役割の詳細を明らかにしたいと考えております。(徳島大学大学院生体情報内科分野/生体材料工学分野・日浅 雅博)