日本骨代謝学会

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ギャップジャンクションを介した細胞間コミュニケーション依存的な骨芽細胞の石灰化

Communication-dependent mineralization of osteoblasts via gap junctions.
著者:Hashida Y, Nakahama KI, Shimizu K, Akiyama M, Harada K, Morita I.
雑誌:Bone. 2014 Jan 2. pii: S8756-3282(13)
  • 骨芽細胞
  • 石灰化
  • ギャップジャンクション

中浜 健一

論文サマリー

 細胞間情報伝達方法の1つであるギャップジャンクション(GJ)は、隣接する細胞間で細胞質中に存在する小分子の直接交流を可能にしている。GJを構成するタンパクはコネキシン(Cx)と呼ばれ、ヒトでは21種類のCxが組織特異的に発現している。骨領域においてはCx43が骨芽細胞や骨細胞に最も多く発現していることから、Cx43が骨の形成や恒常性維持に重要な役割を果たしていると考えられており、Cx43の骨芽細胞分化に関する報告が数多くなされている。コンベンショナルなCx43ノックアウトマウスにおいて胎生期に石灰化の遅延、骨芽細胞の機能抑制が起こることを報告している。近年、Cre-LoxPシステムを用いた骨芽細胞系細胞特異的Cx43ノックアウトマウスが確立されフェノタイプの解析が行なわれている。DongらやMarcusらはCol1-Cre; Cx43f/fマウス、Dermo1/Twist2-Cre; Cx43f/fマウスの解析をそれぞれ行っており、共に骨髄腔の拡大と皮質骨の菲薄化が起こることを報告している。我々は骨芽細胞特異的にCx43がノックアウトされるOsx1-Cre;Cx43f/fマウスの解析を行ったところ、骨形成の低下が認められた。そのメカニズムを詳細に調べるために、我々はERT2-Cre;Cx43f/fマウスの頭蓋骨から分離した骨芽細胞を4-hydroxy tamoxifen (4-OHT)で処理することによりin vitroでCx43をノックアウトする系を確立した。この実験系を用いて骨芽細胞を石灰化誘導培地にて培養したところ、Cxをノックアウトする事でアスコルビン酸(AA)刺激による骨芽細胞の石灰化には影響を及ぼさなかったが、BMP-2刺激による骨芽細胞の石灰化は抑制された。さらに、Cx43がノックアウトされた骨芽細胞に野生型Cx43(382アミノ酸残基)またはN末端変異型Cx43(382aaG2V)を遺伝子導入したところ、野生型を遺伝子導入した骨芽細胞では細胞間コミュニケーションおよびBMP-2刺激による石灰化が回復したのに対し、変異型を遺伝子導入した細胞ではそれらの回復は認められなかった。以上の結果よりGJを介した細胞間コミュニケーションがBMP-2刺激による骨芽細胞分化に重要な役割を果たしていることが示唆された。

著者コメント

 多細胞生物である哺乳類は細胞間のコミュニケーションが必須であると考え、従来より当研究室ではコネキシンに関する研究を行ってきました。著者が当研究室で研究をする頃にジャクソンからコネキシンのfloxマウスとオステリックスCreマウス、タモキシフェン投与によりCreが全身で誘導されるマウスが飼育されるようになり、骨芽細胞の石灰化にコネキシンがどのような役割を果たしているのか調べることとなったのが実験を始めるきっかけでした(中浜)。石灰化の実験など初めて行う実験が多く、著者本人の感想は「やはりコネキシンのノックアウト、遺伝子導入、石灰化誘導までの実験系を確立させるまでが苦労しました。」とのことでした。(東京医科歯科大学・中浜 健一)