日本骨代謝学会

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NF-κBのp65サブユニットはSmad4と会合することでBMP2による骨形成を抑制する

Inhibition of BMP2-induced bone formation by the p65 subunit of NF-κB via an interaction with Smad4
著者:Shizu Hirata-Tsuchiya, Hidefumi Fukushima, Takenobu Katagiri, Satoshi Ohte, Masashi Shin, Kenichi Nagano, Kazuhiro Aoki, Takahiko Morotomi, Goro Sugiyama, Chihiro Nakatomi, Shoichiro Kokabu, Takahiro Doi, Hiroshi Takeuchi, Keiichi Ohya, Masamichi Terashita, Masato Hirata, Chiaki Kitamura, Eijiro Jimi
雑誌:Molecular Endocrinology 2014 28(9):1460-1470.
  • NF-κB
  • 骨形成蛋白(BMP)
  • 骨再生医療

自見 英治郎・土屋 志津

論文サマリー

骨形成誘導因子(Bone morphogenetic protein : BMP)は骨芽細胞の分化を促進し、in vivoで骨形成を誘導する。近年、炎症や免疫応答に関わる転写因子NF-κBがBMP刺激による骨芽細胞分化を抑制することが報告されている。そこで、本研究ではNF-κBがBMPシグナルを抑制する分子機構を解明した。まず、NF-κBの選択的阻害剤であるBAY11-7082(20 μg)とBMP2(2 μg)を含有したコラーゲンペレットを凍結乾燥し、マウス筋膜下に移植すると、BMP2単独で移植した場合と比較して、骨密度が高く海綿骨が充実した異所性骨が形成された。次に野生型(WT)、NF-κBのp65サブユニット欠損(p65-/-)マウスおよびp50サブユニット欠損(p50-/-)マウス由来の線維芽細胞(MEF)をBMP2で刺激すると、p65-/-MEFは他の細胞と比較して骨芽細胞分化が促進した。WTおよびp65-/-MEFをBMP2で刺激してもSmad1/5のリン酸化は変わらないが、p65-/-MEFではリン酸化Smad1/5が核に長く局在し、標的遺伝子Id1遺伝子のプロモーター領域に存在するBMP応答配列により長い時間結合することがわかった。p65のC末端側から欠失変異体を作製したところ、p65の転写活性部位(TA)2領域が関与することが示唆された。またp65はSmad1ではなくSmad4と会合し、さらにSmad4のMH1領域とp65のTA2領域が結合することがわかった。NF-κBは破骨細胞分化にも重要な因子であり、NF-κBの選択的阻害剤が破骨細胞形成を抑制することから、BAY11-7082とBMP2を移植すると骨吸収を抑制することで骨密度の高い異所性骨が誘導された可能性も考えられる。しかし、in vivoで破骨細胞形成を抑制するにはNF-κBの選択的阻害剤を頻回に投与する必要があり、また組織学的解析において、骨面当りの破骨細胞数は変わらないことから、NF-κBの阻害が直接BMP2による骨形成を促進すると考えられる。また、p65サブユニット欠損マウスが胎生致死であることから、NF-κBの選択的阻害剤を全身投与するには副作用に十分に注意する必要がある。今後、p65とSmad4MH1の会合部位を同定できれば、NF-κBの機能を完全に失うことなく、BMPの骨誘導能を促進させることが期待される。(九州歯科大学・自見 英治郎)

著者コメント

私が自見研究室のドアを叩いたのは大学院1年生の春でした。当時、所属分野と自見研究室との共同研究は前例がありませんでしたが、自見先生の下で骨の研究がしたいと希望し、一直線に飛び込んで行ったのが始まりです。BMPシグナルとNF-κBシグナルのクロストークというテーマに出会い、仮説と実証を繰り返すという研究の基本的な軸を学ぶとともに、大きな壁にぶつかった時の突破力を鍛えられました。ここまで辿りつくのは決して平坦な道のりではなかったけれど、自見先生や福島先生、同期の仲間、本当に多くの先生に支えられ、決して諦めない精神でようやく今回の研究成果を発表することができました。この研究に尽力していただいた多くの先生に心から感謝いたします。(九州歯科大学・平田 - 土屋 志津)

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