日本骨代謝学会

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進行性骨化性線維異形成症に関連する活性型activin-like-kinaseシグナルは筋骨化における破骨細胞形成を促進する

Fibrodysplasia Ossificans Progressiva-related Activated Activin-like Kinase Signaling Enhances Osteoclast Formation during Heterotopic Ossification in Muscle Tissues.
著者:Yano M, Kawao N, Okumoto K, Tamura Y, Okada K, Kaji H.
雑誌:J Biol Chem. 2014 Jun 13;289(24):16966-77.
  • FOP
  • Osteoclast
  • TGF-β

矢野 昌人

論文サマリー

 進行性骨化性線維異形成症(FOP)は筋に骨化をきたす遺伝性疾患である。その原因としてBMP受容体(ALK2)の恒常活性型変異が明らかとなっている。これまでの報告から、筋芽細胞においてALK2の恒常活性型変異は骨芽細胞への分化を誘導し、筋組織内異所性骨化に関与することが示唆されているが、FOPにおいて筋組織内に異所性骨化が生じる機序はよくわかっていない。現在有効な治療法は見つかっていないが、骨吸収抑制剤のビスホスホネートの有効性を示す症例報告がある。破骨細胞は骨基質中のカップリングファクターの遊離や、sphingosine 1-phosphate, cardiotrophin-1等の分泌を介して骨形成を促進することが示されている。また、筋組織と骨代謝の間には相互連関が示唆されているが、破骨細胞に対する筋組織の役割についてはよくわかっていない。そこで私共はマウスの皮下および筋内に、恒常活性型ALK2であるALK2(R206H)を発現させた筋芽細胞を移植することで異所性骨化を誘導し、FOP病態における破骨細胞の役割について検討をおこなった。ALK2 (R206H)発現C2C12細胞をBMP-2含有コラーゲンスポンジとともにヌードマウスの皮下、筋内に移植したところ、対照群と比較して、筋内では異所性骨と破骨細胞数の増加が認められたが、皮下では認めなかった。マウス単球様Raw264.7細胞のRANKLによる破骨細胞分化系では、ALK2 (R206H)発現C2C12細胞との共培養あるいはその培養上清添加は破骨細胞形成を促進した。さらに機序を検討するために、DNAマイクロアレイを用いて、 C2C12細胞でALK2 (R206H)導入により発現が増加する因子の探索をおこない、破骨細胞形成促進作用が知られているTGF-βの発現が増加している事に注目した。そこでTGF-βシグナルの阻害実験をおこなった。ALK2 (R206H)発現C2C12細胞の共培養またはその培養上清添加による破骨細胞形成促進は内因性TGF-β阻害剤であるSB431542やTGF-β中和抗体およびp38MAPK阻害剤により抑制された。さらに、ヌードマウスでのALK2 (R206H)発現C2C12細胞の筋内への移植により増加した破骨細胞数もSB431542あるいはp38MAPK阻害剤の投与により有意に抑制された。以上の結果より、筋組織において、FOPの原因変異によりALK2シグナルが活性化されると筋芽細胞からのTGF-β産生が増加し、分泌されたTGF-βがSmad2/3やp38MAPKを介して破骨細胞形成を促進することが示唆された。

著者コメント

 これまでマイクロアレイのデータから宝探しをして、磨いてみたら普通の石ころだったなんてことが何度もあり、そんな中で今回は宝が見つかり喜びもひとしおでした。本研究ではFOPの原因遺伝子である活性型ALK2発現筋芽細胞に破骨細胞形成促進作用があることが明らかとなりました。しかし、筋組織内異所性骨化における破骨細胞の役割については明らかになっておらず、今後の検討により、FOPの治療につながることを期待しています。最後になりましたが、本研究に御助力いただけました共著者のみなさまに心より感謝申し上げます。また、ALK2および活性型ALK2の発現コンストラクトを御供与頂いた埼玉医科大学の片桐岳信教授に感謝申し上げます。(近畿大学医学部再生機能医学・矢野 昌人)