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ビタミンDレセプターを介したシグナルはマウスの運動能を上昇させる

Vitamin D receptor signaling enhances locomotive ability in mice.
著者:Sakai S, Suzuki M, Tashiro Y, Tanaka K, Takeda S, Aizawa K, Hirata M, Yogo K, Endo K.
雑誌:J Bone Miner Res. 2014 Jul 17. doi: 10.1002/jbmr.2317"
  • 転倒
  • 活性型ビタミンD
  • シュワン細胞

坂井 貞興
坂井:前列向かって左、遠藤:坂井の向かって右隣。

論文サマリー

 QOLの低下や生命予後にかかわる骨折を防ぐことが骨粗鬆症治療の大きな目的である。骨折は転倒に起因するものも少なくないため、骨強度を高めることに加え転倒を予防することも骨粗鬆症治療で注目されている。ビタミンDの転倒予防効果に関する報告もあるが、その機序には不明な点が多い。本論文では活性型ビタミンDがマウスの運動能に及ぼす影響を、ロータロッドを用いて検討した。

 一定の回転数に設定したロータロッドを歩かせるトレーニングを野生型マウスに行うと運動能が上昇したが、ビタミンDレセプター(VDR) KOマウスではそのトレーニング前後で運動能に変化は見られなかった。またVDR KOマウスでは加齢に伴う変化としても報告されている坐骨神経軸索、および筋線維上のアセチルコリンレセプター(AChR)の分布に形態的変化がみられた。

 続いて活性型ビタミンDによる効果を検討するため、正常マウスと活性型ビタミンD3誘導体であるエルデカルシトール(ELD)を用い、上述のロータロッド試験を行った。ELDを投与しただけのマウスでは運動能の上昇は見られず、トレーニングだけを行ったマウスでは若干の上昇傾向がみられた。トレーニングとELDを併用すると有意な運動能の上昇が確認された。ELDを投与したマウスでは長趾伸筋のアセチルコリンレセプターの分布領域が広がっていた。

 我々は活性型ビタミンDの作用点として、筋神経栄養因子の産生細胞として知られるシュワン細胞に着目した。ラットより単離したシュワン細胞の培養液中に1α,25(OH)2D3、またはELDを添加するとミエリン構成タンパク質であるMBPや筋神経栄養因子として知られるIGF-1の産生が亢進した。

 これらのことから、活性型ビタミンDのシグナルがマウスの運動能を上昇させることがあきらかとなり、シュワン細胞からのMBPやIGF-1産生亢進を介した経路がその機序の一つである可能性が示唆された。筋神経接合部と運動能の関連については今後の検討課題である。

坂井 貞興
坂井 貞興

著者コメント

 市販後製剤の育薬研究を行う部署で骨領域を担当しています。活性型ビタミンDは古くから骨粗鬆症治療に用いられていますが、まだまだ明らかとなっていない作用が多くあると感じています。運動能への影響もそのひとつです。マウスに活性型ビタミンDを投与すると「元気になるな」とは感じていたのですが、今回のロータロッドを用いた研究で運動能への影響を評価できました。また、末梢神経のシュワン細胞が活性型ビタミンDのターゲットの一つであることが示唆されました。骨や筋、神経を含めた運動器の機能を維持していくことは、これからさらに重要になってくると思います。これからも骨粗鬆症治療薬の新たな可能性について研究を行っていきたいと思います。(中外製薬・坂井 貞興)

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