日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

1st Author

TOP > 1st Author > 水橋 孝治、古川 貴久

Filamin結合たんぱく質Cfm1およびCfm2はアクチン細胞骨格の制御を介して軟骨発生に必須の役割を果たす

Filamin-interacting proteins, Cfm1 and Cfm2, are essential for the formation of cartilaginous skeletal elements.
著者:Mizuhashi K, Kanamoto T, Moriishi T, Muranishi Y, Miyazaki T, Terada K, Omori Y, Ito M, Komori T, Furukawa T.
雑誌:Hum Mol Genet. 2014 Jun 1;23(11):2953-67.
  • Cfm1・Cfm2
  • Filamin
  • 椎間板

水橋 孝治、古川 貴久

論文サマリー

 我々は、軟骨細胞の分化を制御する新規遺伝子の探索を行うため、ATDC5(マウス軟骨様細胞株)を材料としてマイクロアレイ分析を実施した。分化誘導前後のATDC5の遺伝子発現プロファイルを比較して、131個を候補遺伝子として抽出した。その中で軟骨細胞の発生において機能未知の遺伝子の発現を、発生期のマウス軟骨を用いてin situ ハイブリダイゼーション法により解析した。その中で我々は、マウス増殖軟骨細胞層および前肥大軟骨細胞層に高い発現を示すCfm2に着目した。Cfm2の生物学的な機能解析を行うために、Cfm2ノックアウトマウスを作製し解析したところ、野生型と比較して有意な変化は認められなかった。Cfm2にはパラログであるCfm1が存在することから、我々はCfm1の発現について解析した結果、Cfm2と同様にマウス増殖軟骨細胞層および前肥大軟骨細胞層に高い発現を示すことを見出した。そこで我々は、Cfm2ノックアウトマウスに顕著な変異が見られないのは、Cfm1による機能補償によるものと推測して、Cfm1およびCfm2のダブルノックアウト(DKO)マウスを作製した。このDKOマウスは、出生後に側彎症および後彎症を示し、この表現系はFilamin B欠損マウスの表現系に相似していた。In situ ハイブリダイゼーション法により、Cfm DKOマウスの骨格異常は、軟骨細胞の早期分化によることを見出した。さらにCfm DKOマウスでは野生型マウスと比較して、椎間板の軟骨性細胞数および椎体の成長軟骨の軟骨細胞数が著しく減少しており、同部位におけるアポトーシス陽性細胞数が有意に増加していた。次いで、初代軟骨細胞における免疫沈降法により、Cfm蛋白質とFilamin蛋白質が相互作用することだけではなく、Filamin-Smad3複合体の形成にはCfmが必要であることを見出した。さらに我々は、Cfm DKOマウスの初代軟骨細胞では野生型と比較してアクチン線維束の形成が少なく、細胞の表面積が小さくかつ核の長軸長が短いことを見出した。以上の結果から、我々は本研究においてCfm1とCfm2はFilaminと複合体を形成して軟骨性細胞におけるアクチン細胞骨格に必須の分子であることを示した。主要な骨格蛋白質であるFilamin Bの遺伝子変異は、アテロオステオジェネシス I 型と III 型, ブーメラン異形成, ラーセン症候群及び脊椎手根骨足根骨癒合症候群などの先天性骨系統疾患を引き起こすことが知られている。本研究が将来的にこのような先天性骨系疾患の診断法や治療法の開発の一助となれば幸いである。

水橋 孝治、古川 貴久

著者コメント

 当研究室は網膜発生研究をメインに行う一方、発生研究の一環として軟骨・骨の発生の研究を進めてきました。今回、軟骨・骨の研究の成果として軟骨性細胞に高い発現を示すCfm1およびCfm2を見出し、これらの分子がFilaminと結合して、軟骨性細胞の分化及びアクチン骨格形成に必須であることを、Cfm DKOマウスを用いて示しました。この研究を進めるにあたり、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・小守壽文教授および長崎大学男女共同参画推進センター長・伊東昌子教授をはじめとして、軟骨・骨の専門家の先生方から多くのご助言・ご協力を賜りました。この場をお借りして御礼申し上げます。(大阪大学蛋白質研究所・水橋 孝治、古川 貴久)