日本骨代謝学会

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Sclerostin遺伝子欠損マウスの骨形成には、主にリモデリングベースの骨形成が寄与する

Evidence for the major contribution of remodeling-based bone formation in sclerostin-deficient mice
著者:Koide M, Yamashita T, Nakamura K, Yasuda H, Udagawa N, and Kobayashi Y
雑誌:Bone. 2022 160:116401. doi: 10.1016/j.bone.2022.116401.
  • リモデリング
  • 骨代謝共役
  • Sclerostin

小出 雅則

論文サマリー

 骨芽細胞による骨形成は、骨吸収を基にするリモデリングベースの骨形成 (RBBF)および骨吸収に非依存的なモデリングベースの骨形成 (MBBF) によって行われます。前者は、骨量とCa恒常性を維持するために、破骨細胞による骨吸収後に骨形成が起こる場合です。後者は、静止している骨表面に新しい骨基質が形成される場合です。近年、Wnt受容体のアンタゴニストであるsclerostinが骨細胞から産生され、骨形成を抑制することが示されています。抗sclerostin中和抗体の投与は、卵巣摘出ラットおよび骨粗鬆症患者のMBBFを促進します (2014, JBMR; 2016, N Engl J Med)。しかし、sclerostin遺伝子欠損 (Sost-KO) マウスにおいて、どちらの骨形成の様式が主に作用しているかは明確でありません。

 我々は、10週齢のSost-KOマウスやSost+/-マウスに抗RANKL抗体を投与し、2週後に長管骨の骨形成を組織学的に解析しました。μCTと骨形態計測による解析より、12週齢のSost-KOマウスの海綿骨量はSost+/-マウスよりも高い骨量を呈していました。抗RANKL抗体の投与は、骨吸収を抑制し、Sost+/-やSost-KOマウスの海綿骨量を増加させました。骨芽細胞数や類骨表面、骨石灰化速度、骨形成速度の骨形成マーカーは、PBS投与群と比較して、抗RANKL抗体を投与したSost+/-マウスでほぼ完全に抑制されました。 Sost-KOマウスでは、抗RANKL抗体の投与により、これらのパラメーターが約1/3に抑制されました (下図)。この結果は、Sost+/-マウスの骨形成の大部分をRBBFが占めているのに対し、Sost-KOマウスの骨形成の約2/3がRBBFに基づいていることを示します。つまり、Sost-KOマウスにおける骨形成はMBBFのみならず、RBBFも重要な役割を担っていることを明らかにしました。本研究は、抗sclerostin中和抗体の臨床応用に対する重要な知見を提供しました。

小出 雅則
骨吸収抑制薬は根尖病変の拡大を抑制した

著者コメント

 我々は、破骨細胞由来のLIFが骨細胞のsclerostin発現を低下させ、その結果、Wnt/β-カテニンシグナルと骨形成を促進させるという新たな骨代謝共役機構を提唱しました (2017, JBMR)。そこで、Sost-KOマウスでは骨代謝共役機構を外れて、骨形成が大きく優位になると仮説を立てました。実際は、sclerostinの欠損下においてもRBBFは約2/3を占めていました。一方、破骨細胞誘導性のsclerostin発現調節は、RBBFの約1/3に寄与していることが明らかになりました。今後、骨代謝共役における破骨細胞由来のLIFとsclerostinの発現制御の因果関係を明確にすることが課題です。本研究にご指導、ご支援を頂いた、松本歯科大学の宇田川信之先生、小林泰浩先生をはじめ、共に研究をする諸先生方に感謝申し上げます。共同研究者であるオリエンタル酵母の保田尚孝先生にも厚く御礼申し上げます。(松本歯科大学総合歯科医学研究所・小出 雅則)