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マウスの実験的根尖性歯周炎における抗RANKL抗体およびゾレドロネートの作用

Effects of Anti-RANKL Antibody and Zoledronic Acid on Periapical Lesion Development in Mice.
著者:Megumi Ikeda, Akiko Karakawa, Hideomi Takizawa, Yuki Azetsu, Nobuhiro Sakai, Masahiro Chatani, Noriyuki Suzuki, Masamichi Takami
雑誌:J Endod. 2022 May;48(5):632-640. doi: 10.1016/j.joen.2022.02.002. Epub 2022 Feb 15.
  • 抗RANKL抗体
  • ビスホスホネート
  • 根尖性歯周炎

唐川 亜希子
左より、著者、瀧澤秀臣助教、池田めぐみ助教、高見正道教授

論文サマリー

 本邦における骨粗鬆症患者は約1300万人と言われ、その治療には抗ヒトRANKL抗体製剤(一般名:デノスマブ)やビスホスホネート製剤などが適用される。しかし、全身投与された骨吸収抑制薬が顎骨内の局所骨吸収に及ぼす影響には、不明な点が多い。根尖性歯周炎は、細菌の根尖周囲組織への漏出に起因する炎症性疾患であり、その成立は破骨細胞による根尖周囲の骨吸収に依存する。そこで本研究では、実験的根尖性歯周炎モデルマウスを用いて、抗マウスRANKL抗体およびビスホスホネート製剤であるゾレドロネートが根尖性歯周炎に伴う顎骨骨吸収に及ぼす影響を解析した。

 6週齢雄性マウスの下顎左右第一臼歯を歯科用ラウンドバーで髄腔開拡し、Kファイルで根管口を明示したのち、根管を口腔内に開放して根尖性歯周炎を誘発した。施術後0、7、14 日目に抗RANKL 抗体またはゾレドロネートを腹腔内投与し、根尖性歯周炎が確立する21日目に屠殺して解析を行った。

 抗RANKL抗体およびゾレドロネートは、いずれも、根尖周囲組織での骨破壊の拡大と炎症性細胞浸潤を抑制した(図1)。対照群では炎症組織周囲の顎骨に多数の破骨細胞が発現したが、抗RANKL 抗体投与群では破骨細胞数は著明に減少し、一方、ゾレドロネート投与群では対照群と差を認めなかった。全身投与された骨吸収抑制薬は、顎骨内に到達し、それぞれの機序で薬理作用を示したと考えられる。

 さらに大腿骨の硬組織解析では、抗RANKL抗体およびゾレドロネートはいずれも用量依存的に骨量を増加した。このとき、同濃度の骨吸収抑制薬を投与された偽手術群と比較すると、根尖性歯周炎モデルでは大腿骨骨密度の増加が抑制された。先行研究では下顎骨と骨粗鬆症患者の大腿骨の骨リモデリング周期が類似することが報告されており、本研究の根尖性歯周炎モデルでも、局所炎症部位への骨吸収抑制薬の取り込みが促進されることで、大腿骨に作用する薬用量が減少した可能性がある。

 以上の結果から、抗RANKL抗体およびゾレドロネートが根尖病変による顎骨骨吸収を抑制することが明らかとなった。根尖性歯周炎モデルで骨吸収抑制薬による大腿骨量の増加が減少したことから、積極的な感染根管治療が全身投与された薬剤の治療効果を高める可能性が示された。

唐川 亜希子
骨吸収抑制薬は根尖病変の拡大を抑制した

著者コメント

 我々は根尖部の局所炎症の存在下では、骨吸収抑制薬による大腿骨量増加が抑制されることを明らかにしました。一般臨床の現場では無症状の慢性根尖性歯周炎は経過観察されるケースがありますが、本研究結果は口腔内の炎症のコントロールが全身骨代謝の維持に重要である可能性を示しています。これらの知見が、全身投与された薬剤と顎骨骨破壊の関連解明の一助となることを願っております。(昭和大学歯学部歯科薬理学講座・唐川 亜希子)