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本邦一般住民における重度変形脊椎椎体骨折(severe VF)の累積発生率とリスク因子:ROADスタディ第3回・4回調査より

The cumulative incidence of and risk factors for morphometric severe vertebral fractures in Japanese men and women: the ROAD study third and fourth surveys.
著者:C Horii, T Iidaka, S Muraki, H Oka, Y Asai, S Tsutsui, H Hashizume, H Yamada, M Yoshida, H Kawaguchi, K Nakamura, T Akune, Y Oshima, S Tanaka, Noriko Yoshimura
雑誌:Osteoporos Int. 2021 Nov 19. doi: 10.1007/s00198-021-06143-7
  • 椎体骨折
  • 発生率
  • 骨粗鬆症

堀井 千彬

論文サマリー

 脊椎椎体骨折(VF)は骨粗鬆症性骨折の中で最多であり、特に変形の重度なVFは長引く痛みやADL低下と関連するのみならず、高い死亡率とも関連する。一方でVFには無症候性のものもあり、医療機関を受診するのは形態学的に診断されるVFの約1/3と言われている。従って、VFの実態を知るには、医療機関のみの調査では十分ではなく、一般住民を対象とし、レントゲン検査を伴う調査が必須である。しかしながら、このような調査の実施困難さから、本邦におけるVFの疫学的報告は限られている。

 我々はROADスタディ(the Research on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability study)の第3回調査(2012–13年実施、本研究のベースライン)と、3年後の第4回調査(2015–16年実施、フォローアップ)の結果から、本邦一般住民におけるVFの発生率とリスク因子を推定した。両調査に参加した40歳以上の男女1,190人(男性384人、女性806人、平均年齢65.0歳)を対象とし、全脊椎側面単純レントゲンをGenantの半定量法(SQ)を用いて読影した。SQ≧1をVF, SQ=1をmild VF (mVF)、SQ≧2をsevere VF (sVF)とし、ベースラインでV F/sVFでは無かったがフォローアップにおいてVF/sVFと判定された椎体が1つでもある者をVF発生/sVF発生と定義し、年間累積発生率を算出した。また、腰痛や歩行能力低下等の臨床的な要素と関連が強いsVFに着目し、sVF発生のリスク因子を多変量ロジスティック回帰分析を用いて推定した。

 発生率はVFが5.9 %/year(男性7.6 %/year、女性5.2 %/year、p=0.003)、sVFが1.7%/year(男性1.0%/year、女性2.0%/year、p=0.04)であった。ベースラインの最大SQが大きい程、VFおよびsVFの発生率は高く(図)、ベースラインにおけるsVFの有無で2群に分ける(図のA+B1+2群 vs. C群)と、sVF発生率はA+B1+B2群: 1.0 %/yearに対し、C群: 11.7 %/yearと有意に高かった(p<0.001)。A+B1+B2群においてsVF発生のリスク因子の推定を行ったところ、高齢とベースラインにおけるmVFの存在が独立したリスク因子であった。ROADスタディは追跡調査を重ねており、今後は更なるリスク因子の解明、ひいてはより精度の高いVF予防法の解明に寄与したい。

堀井 千彬
図. 3年間の累積sVF発生率
ベースラインの状態による4群分類:
(A) VFなし
(B1) mild VF (mVF)1個のみあり
(B2) mVF2個以上あり、severe VF(sVF)なし
(C) sVFあり

著者コメント

 大学院入学までは整形外科の臨床医で、若手整形外科医のご多分にもれず、骨粗鬆症にも椎体骨折にもほとんど興味は無かったのですが、院生として疫学研究に携わらせて頂くことになり、急に興味が湧きました。疫学とは、コホートの検診の場に行って、温泉とか寿司とか焼肉とかを堪能することと学びました。研究室の標語は『疫学は夜に作られる』です。(東京大学大学院医学系研究科整形外科学・堀井 千彬)