日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 吉田 進二

OPGは関節リウマチ患者の大腿骨近位部骨折関連遺伝子である

An Osteoprotegerin Gene Polymorphism Is Associated with an Increased Risk of Hip Fracture in Japanese Patients with Rheumatoid Arthritis:Results from the IORRA Observational Cohort Study.
著者:Yoshida S, Ikari K, Furuya T, Toyama Y, Taniguchi A, Yamanaka H, Momohara S.
雑誌:PLoS One. 2014 Aug 8;9(8):e104587.
  • 関節リウマチ
  • オステオプロテゲリン
  • 大腿骨近位部骨折

吉田 進二

論文サマリー

関節リウマチ(RA)患者は健常人と比較して骨粗鬆症や大腿骨近位部骨折の有病率が高いことが知られている。これまで骨粗鬆症性骨折の発生予測として骨密度検査の結果や年齢や性別などの臨床的指標の有無、その他にそれらを組み合わせた骨折リスク評価ツールの活用などが提案されてきた。近年では骨粗鬆症や骨粗鬆症性骨折における遺伝要因の解明が進められており、これまでにいくつかの骨粗鬆症性骨折に関連する遺伝子が報告されている。しかしこれらは白人を対象とした大規模研究による成果であり、日本人で同様の結果が得られるかどうかは定かではない。本研究は欧米で報告された骨粗鬆性骨折の発生に関連するいくつかの遺伝子を候補として、日本人RA患者における大腿骨近位部骨折リスク遺伝子を同定することを目的とした。東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターで実施しているIORRAコホート研究に登録されたRA患者の内、2282名を解析の対象とした。欧米の大規模研究で報告された骨粗鬆性骨折に関連する6つの一塩基多型(SNP)を候補として大腿骨近位部骨折との関連をCox重回帰分析で解析した。その際、調節因子としてIORRAコホートで過去に大腿骨近位部骨折との関連を報告している年齢やBMIなどを加えている。その結果、オステオプロテゲリン(osteoprotegerin: OPG)遺伝子の近傍にあるSNP(rs6993813)のみが有意な関連を認めた(ハザード比=2.53、P値=0.0067)。OPG遺伝子は破骨細胞の分化を阻害することでその働きを抑制することが知られている。本研究結果はrs6993813のリスク多型を有することが、正常な骨代謝のバランスを崩し、果ては大腿骨近位部骨折のリスクに成り得る可能性があることを示した。今後は骨折リスク遺伝子の包括的な同定や機能解析を行っていくことで、新規薬剤の開発や骨粗鬆症性骨折のリスク評価モデルの構築に貢献できるのではないかと考えている。

吉田 進二

著者コメント

私は東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターに赴任後、猪狩先生の指導の下でRAの表現形に関連する遺伝子の研究に携わって参りました。これまでに多くの疾患感受性遺伝子が報告されてきましたが、生命予後や合併症の発生に関わる遺伝子については未だ充分には解明されていません。RA患者は骨粗鬆症を合併しやすく、骨折の有病率が高いことが知られておりますが、骨折の危険因子については共著者の古谷先生がIORRAコホートを利用した研究によってこれまでに多くの報告をされております。本研究はこれまでに古谷先生が積み重ねてきた骨折の研究成果を発展させ、骨折の遺伝要因との関連を調査したものです。この論文は当センターが長年に渡って培ってきた研究基盤の賜物であり、ご協力下さった多くの方々には深く感謝しております。(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター整形外科・吉田 進二)