日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 串岡 純一・海渡 貴司・今村 健志

Smurf2はBMP/Smad経路を負に制御しBMPによる骨形成を抑制する

A novel negative regulatory mechanism of Smurf2 in BMP/Smad signaling in bone.
著者:Junichi Kushioka, Takashi Kaito, Rintaro Okada, Hiroyuki Ishiguro, Zeynep Bal, Joe Kodama, Ryota Chijimatsu, Melanie Pye, Masahiro Narimatsu, Jeffrey L Wrana, Yasumichi Inoue, Hiroko Ninomiya, Shin Yamamoto, Takashi Saitou, Hideki Yoshikawa, Takeshi Imamura
雑誌:Bone Res. 2020 Nov 23;8(1):41.
  • 骨形成タンパク(BMP)
  • 骨形成・再生
  • 細胞内シグナル

串岡 純一・海渡 貴司・今村 健志
左:著者、右:海渡先生

論文サマリー

 骨形成タンパク質(BMP)は優れた骨誘導能を持ち、既に欧米では骨形成促進薬として脊椎固定術や難治性骨折に対して臨床応用され、優れた骨再生・骨癒合促進作用が報告されています。しかし、良好な骨再生を得るための高濃度のBMP使用は、投与箇所の炎症反応や目的としていない箇所にも骨が出来てしまう異所性骨化などの副作用が報告されており、安全に使用するためには適切に制御する必要があります。

 BMPは細胞内でSmadというタンパク質を介してシグナル伝達を行い、骨形成関連遺伝子発現を誘導します。シグナル伝達が過剰になると、細胞内に過剰発現したタンパク質はユビキチン化により分解を受けて過剰なシグナル伝達が抑制されます。これまでSmadユビキチン化制御因子2(Smurf2)はSmadのサブタイプであるSmad2/3をユビキチン化することによりトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)経路を制御すると考えられていましたが、BMPの制御における役割については解明されていませんでした。

 そこで我々はSmurf2欠損状態でBMPを用いて骨形成を誘導し、Smurf2のBMPの制御について検討致しました。

 Smurf2欠損マウスに骨形成タンパク質(BMP)を含侵したコラーゲンスポンジを背部に移植して異所性骨を誘導することにより、Smurf2欠損状態では異所性骨量が大きく、骨形成速度が速くなることを解明しました。また、Smurf2欠損状態では骨芽細胞数が増加しており、移植コラーゲンスポンジの内部まで骨形成が認められました。これはSmurf2がBMPの作用を抑制していることを示します。

 同様にSmurf2欠損細胞にBMPを添加培養すると骨分化能が亢進しました。さらにSmurf2はSmad1/5をユビキチン化しており、Smurf2欠損細胞にBMPを添加培養するとBMPの細胞内シグナル伝達を司るリン酸化Smad1/5/8発現が上昇していました。逆にSmad1/5/8を阻害するとBMPを添加培養したSmurf2欠損細胞の骨分化能は低下しました。

 以上により、Smurf2はBMPの細胞内Smad経路を負に制御することによりBMPによる骨誘導能を負に制御することが明らかになりました(図)。

 本研究成果により、骨形成タンパク質(BMP)の効果をより安全・効率的に制御することが期待されます。それによりBMPを臨床使用する際に問題となっている投与箇所の炎症反応や目的外の箇所に骨が出来る異所性骨化などの副作用を抑制し、難治性骨折・脊椎固定術・巨大骨欠損を伴う骨腫瘍等へのより安全な骨再生治療への応用が期待されます。

串岡 純一・海渡 貴司・今村 健志
図:Smurf2欠損状態では骨形成タンパク(BMP)/Smad経路が亢進して骨形成関連遺伝子発現が上昇する。

著者コメント

 整形外科医として臨床に従事していると、骨折手術後や脊椎固定術後の偽関節(骨癒合不全)への追加手術など骨癒合を得るのに難渋するケースに多々遭遇致します。自家骨移植や他家骨移植、人工骨等を組み合わせて追加治療に挑むのですが、欧米では既に臨床使用されているBMPを使用出来れば良いのになぁと願っておりました。
 大学院へ進学後、BMPに関する本テーマに取り組ませて頂き、改めてBMPの適応や限界について深く掘り下げて考える機会となりました。ご指導を頂きました愛媛大学の今村先生、大阪大学の海渡先生をはじめ共著の先生方に深く感謝致します。
 今後BMPの研究がさらに進展して日本でも安全に臨床使用できるようになり、骨癒合に苦しむ患者さんへの福音となることを願っています。(大阪大学整形外科/スタンフォード大学整形外科・串岡 純一)