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低リン血症性Hypマウス由来初代骨芽細胞・骨細胞における遺伝子発現制御異常

Dysregulated Gene Expression in the Primary Osteoblasts and Osteocytes Isolated from Hypophosphatemic Hyp Mice
著者:Miyagawa K, Yamazaki M, Kawai M, Nishino J, Koshimizu T, Ohata Y, Tachikawa K, Mikuni-Takagaki Y, Kogo M, Ozono K, Michigami T.
雑誌:PLoS One. 2014 Apr 7;9(4):e93840
  • 骨細胞
  • リン代謝
  • Hypマウス

宮川 和晃

論文サマリー

骨細胞はFGF23、PHEX、DMP1、FAM20Cなどリン代謝に関わる複数の分子を発現している。しかしながら、これらの多彩な分子の発現制御や機能的連関の詳細については、十分に解明されていない。Hypマウスは最も頻度の高い遺伝性低リン血症性くる病であるX連鎖性低リン血症性くる病(XLH)のモデルで、Phex遺伝子に欠失を有する。本研究においては、骨細胞におけるリン代謝関連分子の相互関係及び発現制御の解明を目的として、Hypマウスより骨細胞および骨芽細胞を単離し、その機能異常を詳細に検討した。
まず、20週齢のHyp及び野生型マウスの長管骨を微細化し、コラゲナーゼによる基質の消化とEGTAによる脱灰を反復することにより骨芽細胞および骨細胞を分化度に応じて別々に単離し、リン代謝関連遺伝子群の発現プロファイルを解析した。Hyp及び野生型のいずれにおいても、Fgf23、Dmp1、及びFam20cの発現は骨芽細胞よりも骨細胞で高かった。また、Hyp細胞においては、Fgf23に加えてDmp1及びFam20cの発現が野生型細胞に比し増加していた。興味深いことに、Hyp骨におけるこれらの遺伝子の発現上昇は、低リン血症を認めない出生前から出現していた。これらの結果から、PhexがFgf23のみならずDmp1やFam20cの発現についても抑制的に制御する可能性が示唆された。一方、III型ナトリウム/リン酸共輸送担体Pit1の遺伝子発現は20週齢のHypの骨細胞では野生型に比べて増加していたが、胎仔骨においてはHypと野生型の間で差を認めなかったことから、出生後の血清リン値の低下に伴ってPit1が代償的に増加したことが推察され、骨細胞は細胞外環境中のリンのavailabilityを感知し、適応する事が示唆された。
さらに、単離した骨芽細胞、骨細胞に対する活性型ビタミンDやリン酸の直接作用について検討した。24時間の10-8M 1,25(OH)2D3刺激は野生型骨芽細胞のFgf23を増加させたが、骨細胞においては増加を認めなかった。Dmp1の発現はHyp及び野生型のいずれの骨細胞においても1,25(OH)2D3刺激により抑制されたが、Hyp細胞においては1,25(OH)2D3に対する応答性が低下していた。一方、24時間の10mMの無機リン酸刺激は野生型骨細胞におけるDmp1の発現を著明に増加させたが、Fgf23の発現については変化させなかった。さらに、Hyp骨細胞では複数のFGFリガンド、FGF受容体及びFGFシグナルの標的遺伝子Egr1の発現が増加しており、FGF/FGFRシグナルが活性化していることが示唆された。以上の結果から、Hyp骨細胞においては多数の遺伝子発現の制御異常が存在することが明らかとなり、病態形成への関与が推察された。これらの結果は、XLHをはじめとする種々のリン代謝異常症の病態の理解や新規治療の開発につながる可能性がある。

宮川 和晃

著者コメント

本研究は私が大阪大学大学院 歯学研究科 口腔外科学第一教室の大学院生として大阪府立母子保健総合医療センターの道上敏美先生のラボで行った仕事です。基盤となる骨細胞単離法は手技の安定に時間がかかり、プロトコールの完成までに2年近くを費やしましたが、特殊なマウスを必要としないので、汎用性が高いのではないかと考えています。また、私の母校である神奈川歯科大学の高垣裕子先生には、骨細胞の単離の基礎を教えていただきました。道上先生と高垣先生のお二人に、心より感謝致します。(大阪府立母子保健総合医療センター研究所 環境影響部門・宮川 和晃)

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