日本骨代謝学会

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イバンドロネート月1回注射製剤がテリパラチド治療後の骨粗鬆症患者の骨密度および骨微細構造に及ぼす効果:MONUMENT study

Effects of monthly intravenous ibandronate on bone mineral density and microstructure in patients with primary osteoporosis after teriparatide treatment: the MONUMENT study.
著者:Ko Chiba, Shuta Yamada, Itaru Yoda, Makoto Era, Kazuaki Yokota, Narihiro Okazaki, Shingo Ota, Yusaku Isobe, Satsuki Miyazaki, Shigeki Tashiro, Sawako Nakashima, Shimpei Morimoto, Shuntaro Sato, Tomoo Tsukazaki, Tsuyoshi Watanabe, Hiroshi Enomoto, Yoshihiro Yabe, Akihiko Yonekura, Masato Tomita, Masako Ito, Makoto Osaki
雑誌:Bone. 2021 Mar;144:115770. doi: 10.1016/j.bone.2020.115770. Epub 2020 Nov 27.
  • 骨粗鬆症
  • 臨床研究
  • イバンドロネート

千葉 恒
長崎大学整形外科の研究グループの医師や大学院生とスタッフ、前列右が著者、その右側がHR-pQCT

論文サマリー

 骨粗鬆症の治療は、1つの薬剤で完遂できるわけではなく、いくつかの種類の薬剤を順番に使い分けていくことが標準的です。よって骨粗鬆症の分野において「逐次療法」は重要な研究テーマの1つです。

 テリパラチドの後にビスホスホネートに切り替える治療は、現在でも王道の手法であり、今回、長崎大学が行ったMONUMENT study(Effects of MOnthly intravenous ibaNdronate on bone mineral density and MicrostrUcturE in patieNts with primary osteoporosis after Teriparatide treatment)は、テリパラチドからイバンドロネートへの逐次療法をテーマにした研究です(https://nagasaki-hrpqct.amebaownd.com/pages/1408747/page_201711081655)。

 本研究で使用したイバンドロネート月1回静注製剤は、内服のビスホスホネート製剤と比較して注射による効果の確実性があり、年1回製剤と比較して副作用が少なく、抗ランクル製剤と比較してリバウンドが少ないため、特に高齢者で、毎月通院ができて、血管が見えて注射が打ちやすい方には良い適応です。

 本研究には、テリパラチド(平均19カ月間)で治療を行った骨粗鬆症の女性66名(平均年齢77.3歳)がエントリーし、イバンドロネート月1回静注製剤(ボンビバ静注1 mgシリンジ)による1年間の逐次療法を行いました。

 DXA(dual-energy x-ray absorptiometry)や骨代謝マーカーによる評価に加え、HR-pQCT(High Resolution peripheral Quantitative CT:高解像度末梢骨用定量的CT)による骨微細構造の評価も行いました(http://blog.nagasaki-seikei.com/kohchiba/index.php?UID=1441027376)。HR-pQCTは「ヒト生体に使用できるmicro CT」をコンセプトに開発された臨床用画像装置で、本邦では長崎大学整形外科が初めて導入しています。

 イバンドロネートによる逐次療養の結果、腰椎BMDは、平均3.2%の上昇し、患者の79.0%がリスポンダーであり、40.3%が5.0%以上の上昇を示しました。また、骨微細構造では、皮質骨の厚みを平均2.6%増加させ、その結果、皮質骨面積が2.5%増加、皮質骨不安定性を示すBR(buckling ratio)が2.5%減少し、皮質骨微細構造の改善が示されました。

千葉 恒

千葉 恒

著者コメント

 臨床研究の最も難しい点は、何と言っても「被験者のエントリー」です。本研究も大変苦労し、エントリー期間を延長し、研究協力施設を増やし、なんとか設定した症例数に達することができました。多大な協力をいただいた協力施設の先生方に、心より御礼を申し上げます。
 また、現在の臨床研究は、ペーパーワークが非常に多く(研究計画書、同意説明書、予算書、モニタリング手順書、統計手順書、利益相反、症例報告書などなど)、加えて、患者さんや協力施設との連絡(電話、メール、手紙)なども多いため、医師だけで行うことは不可能です。
 さらに臨床研究では、当然のことながら、年齢、体格、基礎疾患、骨密度や骨代謝の状態、身体の活動性などにばらつきを持つ集団を対象とし、加えて、経過中の逸脱や脱落がありますので、ある程度の症例数が必要で、かつ、データの外れ値、欠損値にも苦しみます。
 今回の論文作成に際して、骨粗鬆症の逐次療法の過去の種々の論文を読みましたが、初回治療(ナイーブ)と比較して、逐次療法のBMD増加率はどの論文も数字的には低く、かつ、本研究は平均77歳の高齢者の研究となり、ADL低下も伴いながら良い結果が出るのか、かなりヒヤヒヤしましたが、それなりの結果が出て良かったです。苦労が報われたと思っています。(長崎大学 医歯薬学総合研究科 整形外科・千葉 恒)