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PTH間歇投与は骨特異的血管と周囲間質細胞を増加させる

Intermittent PTH administration increases bone specific-blood vessels and surrounding stromal cells in murine long bones.
著者:Zhao S, Hasegawa T, Hongo H, Yamamoto T, Abe M, Yoshida T, Haraguchi M, Freitas PHL, Li M, Tei K, Amizuka N
雑誌:Calcif Tissue Int. 2021 Mar;108(3):391-406. doi: 10.1007/s00223-020-00776-2.
  • PTH
  • 骨特異的血管
  • 骨髄間質細胞

長谷川 智香、網塚 憲生

論文サマリー

 PTHの間歇投与は、前骨芽細胞の細胞増殖と骨芽細胞の骨形成を促進する。一方、骨組織では、endomucin陽性/CD31陽性を示す骨特異的血管の存在が報告されており、endomucin陽性骨特異的血管が骨芽細胞を活性化させ、骨形成を促進する可能性が示唆されている。PTH受容体は、血管内皮細胞やその周囲の細胞群にも発現が認められるが、PTHが骨特異的血管や血管周囲の細胞群に与える影響については、未だ明らかにされていないことから、PTH間歇投与後の骨特異的血管や血管周囲の細胞群の変化について、組織化学的に明らかにすることを目的とし、本研究を行った。

 PTH間歇投与マウスでは、大腿骨遠位骨幹端におけるendomucin陽性血管の数が増加しており、さらに、血管の管腔径や面積の増大が認められた。また、αSMA陽性血管平滑筋細胞で取り囲まれた動静脈が増加するとともに、血管周囲にαSMA陽性間質細胞が認められ、これらαSMA陽性細胞は、c-kit陽性かつ組織非特異型アルカリフォスファターゼ陽性を示していた。血管周囲の間質細胞は、血管と骨表面の骨芽細胞との間を埋めるように局在し、周囲の間質細胞や骨芽細胞と細胞間接触していた。なお、PTH間歇投与マウスの骨組織では、Pthr遺伝子の発現が有意に上昇するとともに、骨芽細胞や血管内皮細胞および血管周囲細胞で、PTH受容体やVEGF、Flk-1(VEGF受容体2)陽性反応が認められたことから、これら細胞群が骨特異的血管数増加に寄与しているものと推測された。

 以上より、PTH間歇投与は、骨特異的血管の数や管腔径を増加させるとともに、血管周囲に局在するαSMA陽性細胞の増殖を促進すること、また、αSMA陽性細胞は血管平滑筋細胞や骨芽細胞系細胞へと分化する可能性が示唆された。

長谷川 智香、網塚 憲生
コントロールマウス(a, c)に比較して、PTH間歇投与マウス(b, d)ではendomucin陽性血管が増加するとともに、血管周囲に多数のαSMA陽性間質細胞が出現する。

著者コメント

 趙 申先生は、上海交通大学口腔医学院から本学に留学され、4年間に亘り大学院生・学術研究員として本研究に携わってくれました。日々コツコツと、誠実に研究へ取り組む趙先生の姿は、ラボ全員の素晴らしいお手本でした。趙先生が明らかにしたPTHの骨特異的血管・間質細胞に対する作用は、今後、骨血管連関の解明に大きく寄与するものと思います。現在、趙先生は母校に戻り、歯科医師として臨床と研究を両立されておりますが、今後も、国際共同研究という形で一緒に研究を進め、互いに高めあってゆければと思っております。(北海道大学大学院歯学研究院 硬組織発生生物学教室・長谷川 智香、網塚 憲生)