日本骨代謝学会

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骨芽細胞・骨細胞のビタミンD受容体(VDR)は、in vivoにおいても活性型ビタミンD [1α,25(OH)2D3] による骨吸収促進作用に不可欠である

The vitamin D receptor in osteoblast-lineage cells is essential for the proresorptive activity of 1α,25(OH)2D3 in vivo
著者:Tomoki Mori, Kanji Horibe, Masanori Koide, Shunsuke Uehara, Yoko Yamamoto, Shigeaki Kato, Hisataka Yasuda, Naoyuki Takahashi, Nobuyuki Udagawa, Yuko Nakamichi
雑誌:Endocrinology 2020 Nov 1;161(11): bqaa178. doi: 10.1210/endocr/bqaa178.
  • VDR
  • 骨芽細胞
  • 骨吸収

中道 裕子・森 智紀
2020年10月28日 博士課程最終発表終了後

論文サマリー

我々は、活性型ビタミンD製剤であるエルデカルシトールの薬理用量・長期間投与は、骨芽細胞・骨細胞のVDRを介して骨吸収を抑制し骨量を増加させることを報告した(JBMR 32:1297, 2017)。また、プロドラッグである1α(OH)D3や1α,25(OH)2D3も薬理用量で長期間投与すると骨吸収を抑制する。一方で共存培養系では、1α,25(OH)2D3は骨芽細胞のVDRを介して破骨細胞分化を促進する。しかしこれまでに、in vivoにおける骨吸収促進作用についての研究報告はなかった。本研究では、1α,25(OH)2D3の骨吸収促進作用と血清カルシウム(Ca)およびリン(P)上昇作用の関係について、骨芽細胞・骨細胞特異的VDR欠損(Ob-VDR-cKO)マウスを用いて解析した。野生型マウスへの1α,25(OH)2D3(5μg/ kg体重/日)4日間投与は、破骨細胞数と血清骨吸収マーカーI型コラーゲンC末端架橋テロペプチド(CTX-I)のレベルを上昇させた。この時、血清Caの上昇および線維芽細胞増殖因子23(FGF23)の数百倍レベルの上昇、および体重減少を伴っていた。血清Pは一部のマウスにおいてのみ著しく上昇した。野生型マウスに抗RANKL中和抗体を前投与すると、1α,25(OH)2D3によって誘導される破骨細胞数の上昇と血清CTX-I, Ca, Pおよび血清FGF23レベルの上昇が抑制され、体重減少も抑制された。この結果と一致して、Ob-VDR-cKOマウスに1α,25(OH)2D3を投与しても、破骨細胞数、血清CTX-I、Ca, PおよびFGF23レベルの上昇は認められず、また体重も減少しなかった。以上、本研究は、1α,25(OH)2D3が骨芽細胞・骨細胞のVDRを介して骨吸収促進作用を発揮し、その骨吸収促進作用が、血清Ca上昇作用および体重減少作用の発現に必須であることを示した(図1)。

中道 裕子・森 智紀

1α,25(OH)2D3は血清Caレベルの調節のために進化したホルモンであり、VDRはCa吸収を行う腸管、Ca再吸収を行う腎臓において発現が高く、骨での発現は低い。実際に骨芽細胞・骨細胞においてVDRを欠損させても血清Caレベルや骨密度は正常であることから、骨芽細胞・骨細胞のVDRのCa恒常性および骨代謝恒常性に対する寄与は限定的である。しかし、我々の前報告(JBMR 2017)と本研究結果より、1α,25(OH)2D3投与による骨吸収抑制作用および骨吸収促進作用発揮には、骨芽細胞・骨細胞のVDRが必須であることが明らかとなった。(図2)。(松本歯科大学・総合歯科医学研究所・硬組織機能解析 中道 裕子)

中道 裕子・森 智紀

著者コメント

 活性型ビタミンDによる骨吸収調節とCa, P代謝調節の協調的制御機構における、骨芽細胞・骨芽細胞のVDRの役割を本研究で明確に示すことが出来たことをうれしく思います。本研究成果が、Ca, P代謝調節破綻が一因と疑われる様々な疾患の病態制御機構の解明につながることを望みます。研究室入室前まで研究に携わった経験がなく、異分野の学部を卒業したため、研究開始時は不安が大きかったです。しかし、研究室の皆様の懇切丁寧なご指導、ご協力のおかげで、博士論文の仕事をここに報告することが出来、感慨深く思います。研究のデザイン、実験方法、論文執筆・改訂の全過程において熱心にご指導いただいた中道裕子先生に感謝申し上げます。ビタミンDのみならず生化学の基礎知識から教えていただいた高橋直之先生、本論文の共著者の先生方に深く感謝申し上げます。(松本歯科大学・博士課程3年・森 智紀)