日本骨代謝学会

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Osterix陽性細胞は発生過程において一時的な骨髄間質細胞と成体における骨髄間葉系幹細胞の起源を含む

Osterix marks distinct waves of primitive and definitive stromal progenitors during bone marrow development.
著者:Mizoguchi T, Pinho S, Ahmed J, Kunisaki Y, Hanoun M, Mendelson A, Ono N, Kronenberg HM, Frenette PS.
雑誌:Dev Cell. 2014 May 12; 29(3): 340-9.
  • 骨髄間葉系幹細胞
  • Osterix
  • レプチン受容体

溝口 利英

論文サマリー

生体内において骨髄間葉系幹細胞は、生涯を通して骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞を供給し、骨および骨髄環境を支持する。しかし、その局在および挙動については不明であった。一方、転写因子であるOsterix(Osx)は、成体において骨芽細胞のマーカーとして知られている。近年、発生段階ではOsx陽性細胞が骨芽細胞以外の細胞にも寄与するとの報告もあるが、その詳細はあまり解析されていなかった。そこで我々は、マウスの胎生期、新生仔期、成体期におけるOsx陽性細胞の系譜を解析した。
その結果、胎生期におけるOsx陽性細胞は幼若期の一時的な骨髄間質細胞を形成すること、新生仔期におけるOsx陽性細胞は長寿命な骨髄間質細胞に寄与すること、成体期のOsx陽性細胞は骨形成細胞にのみ寄与すること、が明らかになった。我々は、この新生仔期のOsx陽性細胞由来の長寿命な骨髄間質細胞を “definitiveストローマ細胞”と名付けた。definitiveストローマ細胞の解析を進めた結果、間葉系幹細胞マーカーであるNestinが陽性であることが明らかになった。さらに、骨髄より分取したdefinitiveストローマ細胞は、in vitroで骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞に分化する能力を有していた。以上より、definitiveストローマ細胞は間葉系幹細胞能を有することがin vitroで証明された。次に我々は、骨および骨髄環境において、レプチン受容体がdefinitiveストローマ細胞に特異的に発現することを確認し、レプチン受容体陽性細胞の細胞系譜解析を行った。その結果、definitiveストローマ細胞はin vivoにおいて骨形成細胞に分化することが明らかになった。さらに我々は、definitiveストローマ細胞が脂肪細胞、および骨折治癒過程における軟骨細胞へも寄与することをin vivoにて証明した。
一方、組織形成が盛んな成長期において、definitiveストローマ細胞の大部分は増殖期にあるが、それを過ぎると静止期に移行することが明らかになった。以上より、definitiveストローマ細胞の細胞周期と子孫細胞への分化には密接な関係があることが示唆された。さらに、definitiveストローマ細胞の分化を調節する微細環境が存在することも想定され、今後のさらなる研究が待たれる。

溝口 利英
マウス骨組織

著者コメント

松本歯科大学からNYのアルバートアインシュタイン医科大学、Paul S. Frenette研究室へ留学する機会を与えて頂きました。本研究は、骨髄の間葉系に属する細胞の全容解明を目的としてスタートしました。期間内での実験系の立ち上げやタイムコース解析には苦労しましたが、ラボメンバーに支えられプロジェクトを完遂することができました。今後は骨と骨髄、そして骨髄外の組織も視野に入れて研究を進めていきたいと思っております。最後に、骨代謝研究の世界に導いて頂き、留学の機会を与えて下さった高橋直之先生、宇田川信之先生、小澤英浩先生、松本歯科大学の諸先生方、そして日頃よりご助言を下さる骨代謝領域の諸先生方に心より感謝いたします。(松本歯科大学総合歯科医学研究所・溝口 利英)