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TOP > 1st Author > 高倉 那奈・自見 英治郎

新規NIK阻害剤は破骨細胞による骨吸収を抑制することで卵巣摘出マウスの骨量減少を防ぐ

A novel inhibitor of NF-kB-inducing kinase prevents bone loss by inhibiting osteoclastic bone resorption in ovariectomized mice.
著者:Nana Takakura, Miho Matsuda, Masud Khan, Fumitaka Hiura, Kazuhiro Aoki, Yuna Hirohashi, Kayo Mori, Hisataka Yasuda, Masato Hirata, Chiaki Kitamura, Eijiro Jimi
雑誌:Bone 2020 Jun;135:115316. doi: 10.1016/j.bone.2020.115316.
  • NIK
  • 破骨細胞
  • 骨粗鬆症

高倉 那奈・自見 英治郎
2019年12月口腔細胞工学分野忘年会

論文サマリー

 日本は超高齢社会を迎え、平均寿命と健康寿命の差を小さくすることが大きな課題であり、筋肉や骨の運動器の機能維持が重要である。骨粗しょう症や関節リウマチなどは骨や関節の機能を低下させ、健康寿命を損なう要因となり、高齢者の健康寿命を延ばすためには、骨や関節の疾患や障害を防ぐことが必要である。転写因子NF-kBは、炎症や免疫応答、細胞増殖に関与するさまざまな遺伝子の発現を調節する転写因子でTNFaなどの炎症性サイトカインによって短時間で活性化される古典的経路とCD40Lやリンホトキシン-bなどのリンパ節形成に関与するサイトカインよって数時間かけて活性化される非古典的経路が存在する。破骨細胞分化を誘導するRANKLはこの両者を活性化する。我々は以前に、NF-kBの非古典的経路のp100からp52のプロセシングに関与するNik遺伝子に機能欠失型点変異を有するリンパ形成不全症(alyphoplasia:aly/aly)マウスが、破骨細胞の減少を伴う大理石骨病を示すことを報告した。この結果は、非古典的経路が骨吸収の亢進によって生じる骨疾患を改善するための薬物標的になる可能性を示している。最近、NF-kB-inducing kinase(NIK)の選択的阻害剤Compund33(Cpd33)が開発された。我々はこのCpd33を入手し、in vitroと vivoで破骨細胞の骨吸収におよぼす効果を検討した。Cpd33は、RANKLが誘導する破骨細胞形成と破骨細胞の分化マーカーNFATc1, dc-stamp、カテプシンKの発現を、細胞生存率に影響を与えることなく、濃度依存的に抑制した。さらにCdp33は、RANKL刺激によって誘導されるp100からp52へのプロセシングを特異的に抑制し、NF-kBの古典的経路、ERKやAktなどの他の活性化経路は抑制しなかった。Cpd33はまた、成熟破骨細胞の骨吸収活性も抑制した。Cdp33を卵巣摘出マウスに投与すると骨形成に影響を与えることなく破骨細胞の形成を抑制することで骨量減少を防止した。以上の結果より、NIK阻害剤は、従来の薬物療法に対する反応が低下している患者、または深刻な副作用がある患者にとって、新しい選択肢となる可能性がある。(九州大学歯学研究院OBT研究センター・自見英治郎)

高倉 那奈・自見 英治郎
NIKの選択的阻害剤Cpd33はRANKL刺激によるNF-kBの非古典的経路のp100からp52のプロセシングを抑制することで、RANKL刺激による破骨細胞形成を抑制する。さらにCpd33を卵巣摘出マウスに投与すると、骨形成には影響せず、骨吸収を抑制することで骨量減少を防ぐ。

著者コメント

 振り返れば、実験が上手く行かず躓く日々もありましたが、教員の先生方、研究室の先輩や後輩の支えもあり形にすることが出来ました。 NIKをターゲットとした本研究の結果が、今後骨吸収を伴う疾患の治療に少しでも役立つことを願います。ご指導頂きました、自見英治郎先生、青木和広先生、松田美穂先生ならびに本研究に携わって頂いた多くの共著者の方に、この場をお借りして深謝申し上げます。(九州歯科大学・高倉 那奈)