日本骨代謝学会

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コラーゲン誘発性関節炎と歯周病菌P.gingivalis投与は相乗的に骨新生を減少させる

Experimental arthritis and Porphyromonas gingivalis administration synergistically decrease bone regeneration in femoral cortical defects.
著者:Okumura G, Kondo N, Sato K, Yamazaki K, Ohshima H, Kawashima H, Ogose A, Endo N.
雑誌:Sci Rep. 2019 Dec 27;9(1):20031. doi: 10.1038/s41598-019-56265-6.
  • 骨折治癒
  • 関節リウマチ
  • dysbiosis

奥村 剛

論文サマリー

【背景】歯周病は関節リウマチ(RA)に合併することが多く, RAの疾患活動性にも悪影響を及ぼす. 動物モデルでも歯周病菌P.gingivalis(P.g)の投与が全身性炎症とともに関節炎を増悪させることが示されている. また, P.gの細胞壁構成成分でもあるリポ多糖(LPS)投与による全身性炎症は骨新生を減少させ(Behrends D. 2016), RAモデルであるコラーゲン誘発性関節炎(CIA)マウスにおいても骨折治癒が遷延する(Hu Y. 2018)との報告と併せて, 歯周病とRAの合併は骨折治癒遷延因子と予想される. 関節炎と歯周病菌投与の合併は骨新生がより減少する, という仮説をマウスモデルで検証した.

【方法】7週齢のDBA/1J雄マウスに5週間・計10回のP.gを経口投与し, 11,14週齢でCIAを誘導し, 16週齢で両側大腿骨骨幹部に皮質骨欠損を作成した. (1)対照群, (2)P.g投与単独群, (3)CIA単独群, (4)合併群の4群を設け, 骨損傷後(PO)2,3,4週で評価した. 評価項目はμCTによる骨新生量(骨欠損部における新生骨体積比; BVd/TVd%), 組織学的評価(新生骨面積あたりの破骨細胞数, 新生骨表面のオステオカルシン免疫染色による活性化骨芽細胞面), 血清TNFαの値で, 統計手法はCIAとP.g投与の2要因分散分析を, 群間比較にはTukeyの多重比較を用いた.

【結果】骨新生量に関して, CIAは全期間でBVd/TVdを減少させた. P.g投与はPO2週のみ減少させたが以降は影響しなかった. 合併による相互作用としてPO4週では相乗的な骨新生減少を認め, 合併群が最も低値であった(図1, 2). 破骨細胞数はPO3, 4週でCIAによって増加した. 活性化骨芽細胞面はPO2週でCIA, P.g投与ともに減少した. 血清TNFαもPO4週で相互作用を認め, 合併群が最も高値であった.

奥村 剛
図1.大腿骨骨欠損部のμCT像 外観 上段;腹側 下段;水平断
奥村 剛
図2. 骨新生量(%) * ; 同時期の対照群と比して有意差あり, # ; 同時期のP.g単独群と比して有意差あり, $ ; 同時期のCIA単独群と比して有意差あり

【考察】本研究はCIAにP.g投与を合併すると修復後期の骨新生量がより減少する, ということを示した初の研究である.
本研究におけるP.g投与群は純粋な歯周病モデルではなく, 歯周病患者にみられる腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)モデルである. 共著者らの先行研究によりP.g投与がdysbiosisを誘導し, 腸管免疫を変化させて関節炎が増悪することや, 高LPS血症をきたすことが示されている. LPSには骨代謝回転を亢進させて破骨細胞を誘導する作用がある.
修復部の組織学的解析結果から, CIAにより骨修復部の骨吸収が亢進している可能性が示唆された. Ciucciらはdysbiosisモデルにおいて前炎症性サイトカインIL-17により, 骨髄内にTNFα産生性の“inflammatory osteoclast” が誘導され, 過剰な炎症と骨破壊が生じることを報告しており, 合併群が最も高値を示した血清TNFαと併せて, このinflammatory osteoclastにより骨修復部の過剰な骨吸収が生じたことが骨新生量の減少につながったと推察する.
今回の結果を臨床的に解釈すると, RA患者の骨折治療に対して, RA疾患活動性の改善や腸内細菌叢に対するアプローチが有効な可能性があり, 今後の研究課題である.

整形外科手術における高齢者の骨折手術の割合が増加しています. 絶望的な骨質の骨にインプラントを挿入し, 祈るように骨癒合を待つものの, ADLが低下する. そんな悲しい日常に立ち向かうべく, 大学院の門を叩きました. 骨折の実験系は長らく眠っていたため, 一からの立ち上げとなり, 苦難の連続でした. まずはsystemicな骨折遷延癒合モデルを作ることから取りかかり, 指導医の近藤直樹先生, 歯科の山崎和久教授のご協力のもと本研究を成し遂げることができました. 分子学的メカニズムの解明と, 高齢者特有の骨折治癒促進薬を探す旅をこれからも続けていきたいと存じます. 末筆ながら, 貴重な機会を与えてくださった遠藤直人教授と, 研究に携わってくださったすべての方々に心より感謝申しあげます. (新潟大学大学院整形外科・奥村 剛)