日本骨代謝学会

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薬剤関連顎骨壊死に対するテリパラチド連日投与と週1回投与の有効性の比較検討のための予備研究

A comparative effectiveness pilot study of teriparatide for medication-related osteonecrosis of the jaw: Daily versus weekly administration
著者:Yumiko Ohbayashi, Akinori Iwasaki, Fumi Nakai, Tasuku Mashiba and Minoru Miyake
雑誌:Osteoporos Int. 2020 Mar;31(3):577-585. doi: 10.1007/s00198-019-05199-w.
  • MRONJ
  • テリパラチド
  • 投与間隔

大林 由美子

論文サマリー

目的:骨粗鬆症患者における薬剤関連顎骨壊死(Medication-related Osteonecrosis of the Jaw:MRONJ)ステージ 2〜3に対するテリパラチド(TPTD)治療は、非対照研究で有望な結果をもたらしている。そしてTPTD連日投与とTPTD週1回投与の両者ともに、MRONJの結果を改善することが報告されている。この研究の目的は、TPTD連日投与と週1回投与で治療されたMRONJ患者の臨床転帰の相違を明らかすることであった。

方法:13人の患者を登録し、2つの治療のいずれかに無作為に割り当てた:6か月間 1回/週56.5μg TPTD注射(週1回投与群;n = 6 ドロップアウト1例)、または6ヶ月間 1回/日20μg TPTD注射(連日投与群; n = 6)。両群の患者は、MRONJポジションペーパーに沿った従来の治療に加えて、必要に応じて集中的な抗菌薬治療を施行した。 MRONJ患者の臨床的効果の指標として治療前後のステージの変化、骨シンチグラフィ定量評価による放射性核種の集積の変化、MRONJによる骨溶解部の新生骨形成率、および骨代謝マーカーの変化を、週1回投与群と連日投与群の間で治療開始から6か月後に比較した。

 軟骨細胞は,NF-κB経路とSTAT3経路の同時活性化によって炎症性サイトカインやケモカインを大量に発現したことから,IL-6アンプの存在が明らかになった.さらにRAモデルマウス及びRA患者の軟骨組織において,IL-6アンプ活性化の指標であるNF-κBとSTAT3の同時活性化が認められた.一方,軟骨細胞特異的なIL-6アンプの抑制によりRAモデルマウスの関節炎が抑制されたことから,軟骨細胞のIL-6アンプがRAの病態に関わることが示唆された.

結果:MRONJによるTPTD治療により、5人の連日投与群の患者と3人の週1回投与群の患者で部分寛解または完全寛解がもたらされた。治療前後のステージの変化は、週1回投与群では有意な改善は確認されなかったが、連日投与群では改善がみられた(p = 0.01)。一連の12人の患者全体でベースラインから6か月後、臨床効果は大幅に改善された(p = 0.008)。

 骨代謝マーカーのうち、オステオカルシン(OC)は治療開始から3ヶ月で、I型プロコラーゲン架橋N-プロペプチド(P1NP)は3ヶ月および6ヶ月で、連日投与群が週1回投与群より有意に高値を示した。骨シンチグラフィ定量評価による放射性核種の集積は両群ともに減少し、MRONJによる骨溶解部に新生骨が形成されたが、放射線核種の集積と新生骨形成率は両群に有意差はなかった。

結論:サンプルサイズが小さいためTPTD連日投与と週1回投与の有意差を検出する能力が制限されている可能性があり、TPTDの投与期間が異なると結果が異なる可能性があると思われるが、この研究ではTPTD連日投与と週1回投与で治療されたMRONJ患者の臨床転帰の相違を初めて明らかにした。このパイロットスタディではMRONJに対し従来の治療に加えてTPTDを6か月投与することにより、両群の患者全体と連日投与群の両方でMRONJステージの大幅な改善がみられた。

著者コメント

 MRONJ治療にTPTDを投与し、素晴らしい新生骨形成が得られた画期的な報告がN Engl J Med. 2010年に掲載され、この治療法での臨床研究を行いたいと香川大学医学部整形外科学講座 真柴 賛准教授にご相談し、2012年から研究を始めました。単施設での研究で症例が集まらず、昨年ようやく形作ることができました。本邦でもMRONJの保存療法としてTPTDを投与した症例報告が増えていますが、TPTDの投与間隔、投与期間、適応症例について十分な検討がなされていません。この報告でMRONJの薬物的治療の進歩の一助となれば幸いに思います。本研究を行う貴重な機会を与えて頂き、ご指導を賜りました香川大学医学部歯科口腔外科学講座 三宅 実教授に深く感謝の意を表します。(香川大学医学部歯科口腔外科学講座・大林 由美子)