日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

1st Author

TOP > 1st Author > 田中 健一

グリコールアルデヒド由来終末糖化産物はIL-10産生を介してヒト単球から破骨細胞への分化を抑制する

Glycolaldehyde-modified advanced glycation end-products inhibit differentiation of human monocytes into osteoclasts via upregulation of IL-10
著者:Tanaka K, Yamagata K, Kubo S, Nakayamada S, Sakata K, Matsui T, Yamagishi SI, Okada Y, Tanaka Y.
雑誌:Bone. 2019 Nov;128:115034. doi: 10.1016/j.bone.2019.115034.
  • 破骨細胞
  • 終末糖化産物(AGE)
  • IL-10

田中 健一

論文サマリー

 終末糖化産物 (AGEs)は、糖尿病患者における血管合併症のみならず骨組織への蓄積により骨脆弱化をきたす。AGEsはin vitroにおいて骨芽細胞分化を抑制し骨形成低下を来すことが報告されているが、AGEsがヒト破骨細胞に及ぼす影響については不詳である。今回、我々はヒト破骨細胞分化におけるAGEsの役割とその作用機序について検討した。

 ヒト末梢血からCD14陽性単球を分離し、M-CSFで3日間刺激培養後、M-CSFとsRANKLを添加し計12日間培養した。M-CSF単独刺激時にグルコース由来AGEs-BSA(Glu-AGEs-BSA)、グリコールアルデヒド由来AGEs-BSA (Glyco-AGEs-BSA)、およびControl-BSAをそれぞれ添加した。その後、TRAP染色、定量性PCR、Cytometric Bead Array(CBA)、ウェスタンブロット(WB)にて破骨細胞の分化効率と機能を評価した。

 ヒト単球に対してWB法でreceptor for AGE (RAGE)タンパク質の発現を確認した。次にTRAP染色により、Glyco-AGEs-BSA刺激にて用量依存性にTRAP陽性細胞数が有意に減少した。さらに同刺激によりNFATc1Cathepsin K遺伝子のmRNA発現が有意に抑制された。また、CBA法によりday1にてGlyco-AGEs-BSA刺激後、破骨細胞分化促進作用を担うサイトカインTNF-α、IL-1β、IL-6および破骨細胞分化抑制作用を担うサイトカインIL-10の産生が有意に亢進した。day6にはTNF-α、IL-1β産生が消失し、day9にはIL-6産生も低下したが、IL-10の産生は依然として亢進していた。そして、リコンビナントIL-10刺激により破骨細胞分化抑制を見出した。一方、Glyco-AGEs-BSA単独刺激に比してIL-10中和抗体とGlyco-AGEs-BSAの共刺激にて破骨細胞分化の抑制作用は減弱した。最後にGlyco-AGEs-BSA刺激を受けた単球において総NF-κBに対するNF-κBの相対的リン酸化が増強される一方、IKK阻害薬bay11-7082を添加後、Glyco-AGEs-BSA刺激によるIL-10発現誘導は阻害剤容量依存的に抑制された。

 以上の結果より、Glyco-AGEs-BSAは単球に作用後、IL-10産生を介してヒト破骨細胞分化を負に制御すること、IL-10産生におけるNF-κBの関与が明らかになった。糖尿病患者においては、AGEsの生体内蓄積により破骨細胞形成に関わる遺伝子群の転写破綻がもたらされ、骨吸収低下をきたすと考えられた。さらにAGEsが骨芽細胞分化を抑制する報告と本研究成果を踏まえると、AGEsは低回転型の骨リモデリング異常をきたし骨折リスクを増加させると考えられた。

田中 健一

著者コメント

 私は糖尿病・内分泌内科医として診療に携わっています。2型糖尿病患者は非糖尿病患者と比べ骨密度が高いにも関わらず骨折が多いこと、骨形成・骨吸収マーカーが低値であると報告されていましたが、AGEsとヒト破骨細胞分化についてはこれまであまり報告がなく、今回このテーマを選びました。田中良哉教授、岡田洋右准教授、山形先生、その他多くの先生方に支えていただきこうして研究成果を報告することができました。この場をお借りして心から感謝申し上げます。(産業医科大学第1内科学・田中 健一)