日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 尾市 健

Adamts17はBMPシグナルの調整を介して骨格形成に関与する

Adamts17 is involved in skeletogenesis through modulation of BMP-Smad1/5/8 pathway.
雑誌:Cell Mol Life Sci. 2019 Jun 14. doi: 10.1007/s00018-019-03188-0
  • 軟骨内骨化
  • BMPシグナル
  • マイクロフィブリル

尾市 健
最左:著者、右手前:淺原弘嗣教授、ラボの近くにあるレストランにて

論文サマリー

 ADAMTS17遺伝子はADAMTSファミリーの一つで、マイクロフィブリルとよばれる微小繊維構造を修飾することが近年報告されている。マイクロフィブリルはフィブリリン蛋白から構成され、組織の力学強度を担保したり、TGFβスーパーファミリーの活性を制御するとされる。

 ADAMTS17遺伝子は稀な骨系統疾患であるWeill-Marchesani症候群の原因遺伝子の一つでもあり、Weill-Marchesani症候群患者は低身長、短指症、皮膚肥厚に伴う関節拘縮を来す。近年ヒト低身長のGWAS解析などから、身長を規定する遺伝子としても報告されているが、ADAMTS17の骨格形成における機序は分かっていなかった。そこで我々はAdamts17KOマウスを作成し、Adamts17の骨格形成における機能を解析した。

 Adamts17fx/fxマウスを作成し、全身でCre recombinaseを発現しているCAGCreマウスと掛け合わせることでAdamts17KOマウスを作成した。Adamts17KOマウスは生後の成長障害を来たし(図1)、6-10%の長管骨長の減弱、短指症、皮膚肥厚を呈し、Weill-Marchesani症候群を模倣していると考えられた。

尾市 健

 生後7日齢における成長板を観察すると、Adamts17KOマウスでは肥大軟骨層の長さが減弱していた。より詳細なメカニズムを調べるため、Laser microdissectionを用いて表現系が見られた肥大層からmRNAを抽出し、RNA-seqを行った。Adamts17KOマウスで2倍以上有意に発現が低下していた遺伝子276個を用いてGene Ontology解析を行った所、BMPシグナルの低下が示唆された。実際にBMPシグナルの下流であるpSmad1の免疫染色を行った所、コントロールマウスで見られた前肥大層のpSmad1の発現がAdamts17KOマウスで有意に低下していた(図2)。

尾市 健

 初代軟骨細胞培養や中足骨器官培養の系においてもAdamts17KOマウスではBMPシグナルが減弱しており、Adamts17はBMPシグナルを介して、骨格形成を制御していると考えられた。Adamts17KOマウスでは成長板軟骨基質に存在するFibrillin2蛋白の組成が増加していたことから、マイクロフィブリルの組成変化がBMPシグナルの減弱に寄与している可能性が示唆された。

 当初はOA研究が主流で、ラボ内で発生学の研究をしている人が他におらず、日々試行錯誤の連続でした。しかし、研究室の同僚の支えや共著者の丁寧かつ的確なご指導をいただき、このような形として研究をまとめることができたことを大変嬉しく思います。(Department of Orthopedics, University of Maryland, USA・尾市 健)