日本骨代謝学会

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関節リウマチ治療薬アバタセプト(CTLA4-Ig)は、カルシウムオシレーションに干渉し破骨細胞分化を抑制する

CTLA4-Ig directly inhibits osteoclastogenesis by interfering with intracellular calcium oscillations in bone marrow macrophages.
著者:Hiroyuki Okada, Hiroshi Kajiya, Yasunori Omata, Takumi Matsumoto, Yuiko Sato, Tami Kobayashi, Satoshi Nakamura, Yosuke Kaneko, Shinya Nakamura, Takuma Koyama, Shunichi Sudo, Masashi Shin, Fujio Okamoto, Hisato Watanabe, Naohiro Tachibana, Jun Hirose, Taku Saito, Toshiyuki Takai, Morio Matsumoto, Masaya Nakamura, Koji Okabe, Takeshi Miyamoto, Sakae Tanaka
雑誌:J Bone Miner Res. 2019 Sep;34(9):1744-1752. doi: 10.1002/jbmr.3754.
  • 破骨細胞
  • カルシウムオシレーション
  • 関節リウマチ

岡田 寛之
東京大学チーム

論文サマリー

 関節リウマチ治療薬アバタセプト (CTLA4-Ig)が破骨細胞分化を抑制する事 は、2008年にGeorg Schett先生らのグループが初めて報告し(Axmann R, Ann Rheum Dis. 2008)、IDO/Tryptophan pathwayが作用機序の一つと考えられた (Bozec A, Sci Transl Med. 2014)。しかし、破骨細胞分化直接抑制の作用機序の全容は不明だった。

 まず、骨髄マクロファージ(BMM)にM-CSF + RANKLを投与し破骨細胞誘導する際、CTLA4-Igを投与すると、NFATc1の発現が抑制された。CTLA4-Igのう ち、CTLA4が作用ドメインである事を確認した。

 次に、細胞内カルシウムオシレーションに着目した。CTLA4-IgをBMMに急性 投与すると、オシレーションは高周波を中心に抑制された。また、CTLA4-Igを 1晩投与するとオシレーションの振幅は減衰した。CTLA4-Ig投与によるオシレーションの抑制効果は、Fc receptor gamma(FcRγ)KOマウスでは観察されなかった。

 最後にIn vivoの検討として、LPS誘発性頭蓋骨骨溶解モデルを用いた。Wild typeマウスではCTLA4-Ig投与によりLPS誘発性の骨破壊は抑制された。一方FcRγKOマウスでは、骨破壊が抑制されなかった。

 結論として、 CTLA4-IgはFcRγ依存的に細胞内カルシウムオシレーションに干渉し、NFATc1の発現を抑制し破骨細胞分化を抑制する。

岡田 寛之

岡田 寛之
慶應義塾大学チーム

岡田 寛之
福岡歯科大学チーム

 この研究は、東京大学・慶應義塾大学・福岡歯科大学の連合チームで仕上げた 論文です。田中栄教授、宮本健史教授(現在、熊本大学)、岡部幸司教授と、骨代謝研究のリーダーから直接指導頂きました。また学会発表の場でディスカッションさせて頂く中で、新たな切り口が生まれ、本研究を一つ上のランクに上げて頂きました。この場を借りて深謝致します。
  論文の目玉は、カルシウムオシレーションの測定および解析です。 測定に関して、筆者がまずFluo-4を用いた予備検討を行い、カルシウム欠乏状態ですら変化が明瞭だった為(Supplement videoを参照下さい)、「これは確か に効いていそうだ」という事で、骨代謝学会の休憩スペース にて福岡歯科大学 チームとディスカッションさせて頂き、その後、鍛冶屋浩先生にご協力頂きま した。Fura-2を用いた2波長同時測定の正規法で、CTLA4-Ig急性投与・1晩投 与の2条件を粘り強く測定頂きました。 解析に関して、時系列に沿った周波数解析の手段として、 ウエーブレット解析 を用いました。経済学・生態学で使用実績のある手法を移植し、とてもよくハマりました。(神経・筋生理学でも使用例がある事は、後から知りました。学部教養で学んだプログラミングが始めて役に立ちました。)
  細胞内カルシウム制御の実態は未解明点が多く残されています。特に非興奮性 細胞(神経・筋以外)におけるオシレーションは、未開拓なテーマです。「オシレーションとは何か」という根源的な問いに答えられるよう、これからも微力ながら頑張ります。(東京大学整形外科・岡田 寛之)