日本骨代謝学会

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Pmepa1は活性化破骨細胞で発現誘導され骨吸収を制御する

Prostate transmembrane protein androgen induced-1 is induced by activation of osteoclasts and regulates bone resorption
著者:Xianghe Xu, Hirohito Hirata, Makoto Shiraki, Asana Kamohara, Kenichi Nishioka, Hiroshi Miyamoto, Toshio Kukita, and Akiko Kukita
雑誌:FASEB J. 2019 Mar;33(3):4365-4375
  • 破骨細胞
  • 骨吸収
  • リソソーム

久木田 明子

論文サマリー

 破骨細胞は骨の表面に存在する多核の大型の細胞であるが、骨の表面という特殊な環境で活性化され骨吸収を始めることが知られている。造血幹細胞に由来する破骨細胞の分化機構についてはRANKL受容体下流の細胞内シグナルタンパク質が報告されそのメカニズムが明らかにされているが、分化の最終段階である活性化の制御機構についてはまだ不明な点が多い。

 破骨細胞は酸や酵素を盛んに分泌することにより骨を吸収する多核細胞で、その分化や活性化には小胞輸送が重要な役割をもっている。近年、このような細胞内小胞輸送にはユビキチンリガーゼが重要な役割をもつことが明らかとなってきた。我々は、以前にラット破骨細胞前駆細胞のDNAマイクロアレイ解析から、HECTE3ユビキチンリガーゼであるNedd4ファミリーのアダプタータンパク質Pmepa1 (Prostate transmembrane protein androgen induced-1)を見出した。Pmepa1はRANKL-p38MAPKシグナル経路によりin vitroで形成される破骨細胞前駆細胞に発現が誘導され、破骨細胞分化に関わる可能性が考えられた(Funakubo N. et al. J. Cell Physiol. 2018)。Pmepa1はI型膜タンパク質で、現在までは主に癌細胞における役割に関する研究が中心であり、肺癌、乳癌及び前立腺癌細胞において増殖、遊走、転移を制御することが明らかにされてきた。本論文においては、前述の報告をさらに進展させ、Pmepa1がin vivoの破骨細胞において高く発現し、骨吸収の新たな制御因子であることを報告した。

 破骨細胞は骨髄マクロファージにRANKLを添加することにより培養デッシュ上で形成することが出来る。形成した破骨細胞はマーカー酵素として知られているTRAPやカテプシンKを発現しているが成熟した細胞までには至っておらず、象牙質切片上に載せると活性化し骨吸収を始める。Pmepa1は培養デッシュ上の破骨細胞では発現していないが、象牙質切片上の破骨細胞で発現が誘導された(図1)。さらに、その発現は破骨細胞の骨吸収能と相関があり、アレンドロネート、PI3K阻害剤などの骨吸収阻害薬を添加すると減少した。また、破骨細胞でPmepa1の発現をshRNAを用いてknockdownすると骨吸収が抑制された。また、Pmepa1は破骨細胞ではリソソームに主に局在しており、エンドソームマーカーEEA1やオートファゴソームマーカーLC3との共局在が見られた。

久木田 明子

 さらに、ラットアジュバント関節炎の骨破壊部位に存在する骨表面の破骨細胞と骨から離れた場所に形成される多核のTRAP陽性の破骨細胞様細胞におけるPmepa1の発現を調べた。その結果、どちらの破骨細胞もカテプシンKを高く発現しているにもかかわらず、骨面上の破骨細胞においてPmepa1が顕著に発現していることがわかった(図2)。Pmepa1は活性化した破骨細胞のマーカー及び骨吸収制御因子、病的な骨破壊の標的として有望なタンパク質であると考えられた。

久木田 明子

 Pmepa1がin vitroの培養でRANKLにより破骨細胞の前駆細胞において発現誘導されることを以前の研究で報告していましたが、その発現誘導は一過性であると思われました。しかしながら驚いたことに、in vivoの破骨細胞においてはPmepa1が高く発現していることがわかったことからこの研究が始まりました。第一著者の徐さんは博士課程の大学院に入った当初から共焦点顕微鏡の解析に苦労しながらこの課題に熱心に取り組んでくれました。また、本論文の組織解析は九大歯学研究院分子口腔解剖学分野の久木田敏夫との共同研究で行いました。今後さらにPmepa1の破骨細胞における働きを明らかにしていきたいと考えています。(佐賀大学医学部病因病態科学講座微生物学分野・久木田 明子)