日本骨代謝学会

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NF-k(カッパー)Bの非古典的活性化経路の構成的活性化は軟骨内骨化を障害する

Constitutive activation of the alternative NF-κB pathway disturbs endochond ral ossification.
著者:Nakatomi C, Nakatomi M, Matsubara T, Komori T, Doi-Inoue T, Ishimaru N, Weih F, Iwamoto T, Matsuda M, Kokabu S, Jimi E.
雑誌:Bone. 2019 Jan 3;121:29-41.

自見 英治郎・中富 千尋

論文サマリー

 骨内骨化は骨格形成に重要である。転写因子NF-κB は炎症反応や免疫応答に関与する遺伝子の発現を調節する他に組織発生にも重要な役割を担っている。NF-κBの活性化機構にはIκBαのリン酸化と分解を伴う古典的経路とNIKを介する非古典的経路の2つが存在するが、最近の報告では、NF-κBの古典的経路の主要なサブユニットであるp65(RelA)が、軟骨細胞の分化やアポトーシスの制御に深く関わっていることが示されている。これまでに我々を含め幾つかの研究グループがNF-κBの非古典的経路が骨の恒常性を維持することを報告しているが、軟骨細胞発生における非古典的経路の役割はまだ不明である。我々は、構成的にNF-κBの非古典的経路が活性化されるp100欠損(p100-/-)マウスを用いて、軟骨内骨化におけるNF-κBの非古典的経路の役割を検討した。非古典的経路は野生型マウスの胎生期の関節軟骨で活性化された。 p100-/-マウスは生後14日頃から小人症を呈し、成長板の組織学的解析では軟骨細胞柱の異常な配置と肥大軟骨層の狭小が見られた。これらの観察と一致して、p100-/-マウスでは肥大軟骨細胞のマーカーであるColXやMMP13の発現が抑制されたが、ColIIやアグリカンなどの初期軟骨細胞マーカーは抑制されなかった。野生型及びp100-/-マウスの軟骨細胞を調製し、ペレット培養を行ったところ、ColIIの発現は影響なく、ColXの発現が抑制されたことから、これらの異常が栄養状態やホルモンなどの全身的な要因でなく、細胞自身の異常に起因することがわかった。BrdUラベリング実験よりp100-/-マウスでは増殖軟骨細胞の増殖能が低く、増殖軟骨細胞から肥大軟骨細胞へ分化する細胞の供給が低下していると考えられた。p100-/-マウスとRelB-/-マウスと交配するとp100-/-マウスの成長板軟骨の異常は部分的に救済された。以上の結果より、NF-κBの非古典的経路は軟骨細胞の増殖および分化を調節して軟骨内骨化を調節すると考えられる。(九州大学歯学部大学院歯学研究院附属OBT研究センター・自見 英治郎)

自見 英治郎・中富 千尋

 本論文では、NF-κB非古典的経路の新たな機能として、軟骨内骨化過程を制御している可能性を見出しました。NF-κB非古典的経路にはまだわかっていない機能が多く存在するため、今後更に研究が進んでいくことを願っております。研究を始めた当時、研究室では破骨細胞や骨芽細胞の研究がメインで行われていた為、軟骨細胞の研究手法を学ぶために、長崎大学の小守壽文先生をはじめ多くの先生方にアドバイスを頂きました。この場をお借りして心より御礼申し上げます。軟骨細胞を扱うのは初めてで、なかなか実験が進まず苦労することもありましたが、一緒に考え、根気よく指導して下さった自見英治郎先生、研究室の諸先生方に感謝申し上げます。(九州歯科大学分子情報生化学分野・中富 千尋)