日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 宮岡 大知

軽度~中等度慢性腎不全患者において腎機能低下はデノスマブ投与後の血清Ca濃度の低下および骨密度の増加を予測する

Impaired residual renal function predicts denosumab-induced serum calcium decrement as well as increment of bone mineral density in non-severe renal insufficiency.
著者:Miyaoka D, Imanishi Y, Ohara M, Hayashi N, Nagata Y, Yamada S, Mori K, Emoto M, Inaba M.
雑誌:Osteoporos Int. 2019 Jan;30(1):241-249.
  • デノスマブ
  • 低カルシウム血症
  • CKD

宮岡 大知
写真:今西康雄先生(左)と筆者(右)。ポスター発表したANZBMS2017ブリスベンで撮影

論文サマリー

 デノスマブ(Dmb)投与による骨折リスク低下と骨密度上昇率は、慢性腎臓病(CKD) stage1-4で安定していたとの報告がある。一方、CKD stage4-5Dでは低カルシウム(Ca)血症が高率に発生したとの報告もあるが、軽度~中等度の腎機能低下を有する骨粗鬆症患者における報告は少ない。そこで我々は、Dmb60mg投与による血清Ca濃度の低下を予測する因子、またそれらの因子とBMD増加との関連について検討した。

【対象・方法】
 本研究は、2013年11月から2016年9月までの間に当院にてCa/天然型ビタミンD3/マグネシウム配合剤を内服下でDmb投与を開始し、少なくとも半年後の2回目投与まで観察できたCKD stage4-5Dに至らない骨粗鬆症患者77症例:平均年齢 67.9歳、補正Ca濃度 9.4 mg/dL、eGFR 67.0 (35.9-111.3) mL/min/1.73m2、TRACP5b 356 mU/dLを対象とした。Dmb初回投与後、骨代謝マーカーを含む各種臨床パラメータを詳細なタイムコースで測定した。また、腰椎 (LS)及び大腿骨頚部 (FN)の骨密度はDXA法により測定した。

宮岡 大知
Figure:前治療および投与回数がデノスマブ投与後の補正Ca低下量に与える影響

【結果】
 補正Ca濃度は初回投与7日後に9.1 ± 0.4 mg/dLと最も低下し、その後上昇した。重回帰分析において、投与前補正Ca、eGFR 60未満と、log(TRACP5b)、log(BAP)もしくは骨吸収抑制薬の前治療歴が、投与7日後の補正Ca変化量に対する独立した説明因子であった。さらに2回目のDmb投与時における補正Ca低下量 (0.09 ± 0.3 mg/dL)は、初回投与時 (0.36 ± 0.4 mg/dL)より有意に減少した。また、6ヶ月のデノスマブ治療後、LS-BMD(2.77 ± 0.5%)およびFN-BMD(1.84 ± 0.8%)は有意に増加し、その増加率はそれぞれ、投与前のTRACP5bおよびBAPと正の、投与前のeGFRと負の有意な相関を示した。

【考察・結論】
 腎機能低下と骨代謝回転亢進が、投与後の血清Ca濃度の低下量および骨密度の増加量と正に相関した。初回投与前の骨吸収抑制薬による前治療歴や、2回目のDmb投与では、血清Ca濃度の低下量が減少し、より安全に投与可能である。

 本研究は私が大学院生の間に最も携わらせて頂いた思い入れのある臨床研究であり、この研究を通して、国際学会で初めてTravel Grantも頂くことができました。論文化に際しては、reviewerの先生方の鋭いご指摘など多くの苦労を伴いましたが、院生の間にかたちにでき、非常に感慨深いものがありました。これからも世界に研究成果を発信してゆけるよう、精進したいと思います。(大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学・宮岡 大知)