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FGF-2を担持した多重構造PLLAナノシートは徐放効果により大腿骨骨骨欠損モデルにおける新生骨誘導を促進する

Multi-layered PLLA-nanosheets loaded with FGF-2 induce robust bone regeneration with controlled release in critical-sized mouse femoral defects.
著者:Murahashi Y, Yano F, Nakamoto H, Maenohara Y, Iba K, Yamashita T, Tanaka S, Ishihara K, Okamura Y, Moro T, Saito T.
雑誌:Acta Biomater. 2018 Dec 21. pii: S1742-7061(18)30756-6.
  • 骨再生医療
  • FGF-2
  • 骨折修復

村橋 靖崇

論文サマリー

 Spin coating法による60 nm厚のポリ乳酸(PLLA)ナノシートは、ナノ厚特有の構造により組織に高い接着性を示すとともに生体適合性に優れ、生体内で分解、吸収される。今回、PLLAナノシートに骨形成促進剤を担持する方法を開発し、マウス大腿骨骨欠損モデルにおける骨形成への作用を検討した。

 骨形成に有利に働く条件を検証するため1重のナノシートにrhFGF-2を担持した群(Mono)、3重のナノシートにrhFGF-2を担持した群(Tri)を作成した(図1)。

村橋 靖崇

 まず始めに生体内における薬剤徐放性評価のためC57BL/6Jマウスの皮下にICG標識rhFGF-2を担持させたナノシートを移植し、In Vivo Imaging System(IVIS)を用いて検証した。Tri群は単回注射群、Mono群より長期間徐放されていることが確認され、ハイドロゲルに担持させたrhFGF-2より薬剤の拡散が抑えられていた(図2)。

村橋 靖崇

 続いて生体内における新生骨の誘導能を評価するためC57BL/6Jマウスの8週齢オスの大腿骨骨欠損モデルにrhFGF-2担持ナノシートを移植し、新生骨誘導を検証した。マイクロCTを用いた計測においてTri群が骨欠損部の新生骨を最も誘導し、欠損間距離を短縮させた。骨欠損部の新生骨をSafranin O染色にて評価したところ、Tri群において軟骨内骨化を多く認めた。免疫組織学的評価では新生骨におけるRunx2, Osterix, p-Fgfr1の陽性率がTri群で有意に高値であった。

 rhFGF-2を3重のナノシートに担持することで生体内における徐放性が変化し、その結果、より強力な骨形成促進作用を誘導することができた。PLLAナノシートは、特異な形状、組織吸着性、生体適合性に加え、薬剤徐放の特性も有することがわかり、骨再生以外の多くの分野でも応用が期待できると考えられた。

 私は札幌医科大学整形外科に入局後、東京大学整形外科の齋藤琢先生の研究室に国内留学させて頂いております。整形外科医にとって骨折治療、骨癒合は最も得意とする分野であり、日々の診療の中で診断、治療の礎と言っても過言ではありません。骨再生医療のテーマは多くの整形外科治療に通ずるもので、非常に興味深く研究させていただくことができました。しかし、その分子機構、メカニズムは全く分からず、研究当初は失敗の毎日でした。しかし、研究室の同僚の支えや共著者の丁寧かつ的確なご指導をいただき、このような形として研究をまとめることができたことを大変ありがたく思います。また、新規生体内材料の技術提供をいただいた東海大学の岡村陽介先生にはこの場を借りて感謝申し上げます。今後、骨折治療のみならず様々な分野におけるPLLAナノシートの臨床応用につながっていくことを期待したいと思います。(東京大学整形外科・村橋 靖崇)