日本骨代謝学会

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鎖骨頭蓋異形成症患者やそのモデルマウスにおいて、蝶形骨低形成は明確な骨表現型である

Sphenoid bone hypoplasia is a skeletal phenotype of cleidocranial dysplasia in a mouse model and patients.
著者:Mitomo K, Matsunaga S, Kitamura K, Nakamura T, Saito A, Komori T, Muramatsu T, Yamaguchi A.
雑誌:BONE 2018 120:176-186
  • 鎖骨頭蓋異形成症
  • 蝶形骨
  • Runx2

三友 啓介

論文サマリー

 鎖骨頭蓋異形成症(CCD)はRUNX2ヘテロ変異による常染色体優性遺伝性の疾患であり、膜性骨化に由来する様々な骨の成長が遅延し、低形成を引き起こすことが知られている。またCCD患者の中には蝶形骨の変形をきたす報告もわずかに散見されるが、詳細な骨表現型に関しては不明である。蝶形骨のほとんどは軟骨内骨化で形成されるが、翼状突起内側板は膜性骨化と軟骨内骨化の複合骨化で形成されることが報告されている。そこで我々は、CCDにおける蝶形骨の表現型を明らかにするために、膜性骨化領域を含む翼状突起内側板に焦点を当て、CCDモデルマウス(Runx2+/−マウス)やCCD患者のCT画像を用いて詳細な形態解析をおこなった。胎生期における組織学的解析で、Runx2+/−マウスでは野生型と比べて、翼状突起内側板発生初期に間葉系細胞の凝集が遅延していることが明らかとなった。また野生型において、翼状突起内側板上部領域ではOsterix陽性細胞が多数認められ、bone colorの形成や海綿骨構造が認められたが、Runx2+/−では同領域においてOsterix陽性細胞はほとんどみられず、bone colorの形成もみられなかった。さらに発生がすすむと、翼状突起内側板下部領域においてはRunx2+/−・野生型マウスともに軟骨内骨化が起こることを認めた。生後直後になると、野生型ではよく発達した海綿骨が上部2/3を占め、その直下に軟骨が位置していた。しかし、Runx2+/−マウスでは翼状突起内側板は周囲を軟骨が取り囲み、その中心部に石灰化組織とわずかな海綿骨構造を有していた。成獣になると、Runx2+/−・野生型マウスともに翼状突起内側板は骨に完全に置換していたが、組織学的解析やマイクロCTによる解析の結果、Runx2+/−マウスでは野生型マウスに比べて、その長さが短かった。さらにCCD患者のCT画像解析の結果、ヒトにおいてもCCD患者は健常者と比べて翼状突起内側板の長さが短く、特に翼状鈎の短縮が顕著であったために、CCDにおける蝶形骨翼状突起内側板の低形成を明らかにした。さらに、翼状鈎は嚥下機能で重要な役割を担っている口蓋帆張筋の腱の滑車となるので、今後CCD患者における嚥下機能の解析も期待される。

 以上のように、本報告では蝶形骨翼状突起内側板がCCDの標的骨格の一つであるこを初めて明らかにした。

三友 啓介

私は東京歯科大学卒業後、6年間の歯科・口腔外科臨床を経て東京歯科大学大学院に入学しました。
 基礎研究はまったくの素人で、実験などすべてが初めての経験。本当に一年生に戻った気持ちでやらせていただきました。このテーマは「東京歯科大学研究ブランディング事業:顎骨疾患の集学的研究拠点形成」の一つの研究プロジェクトとして推進され、ここまで研究を進め、論文にできたことはご指導下さった山口朗教授はじめ、多くの先生方のおかげであります。今後はご指導して下さった先生方のような研究者になれるように日々精進していきたいと考えております。(東京歯科大学保存修復学講座・三友 啓介)