日本骨代謝学会

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Cyp27b1遺伝子欠損マウスにおいてEldecalcitolはAlfacalcidolよりも効果的に骨形成を促進する 他

[1]Eldecalcitol is more effective in promoting osteogenesis than alfacalcidol in Cyp27b1-knockout mice.
[2]Nongenomic effects of 1α,25-dihydroxyvitamin D3 on cartilage formation deduced from comparisons between Cyp27b1 and Vdr knockout mice.
著者:[1]Hirota Y, Nakagawa K, Isomoto K, Sakaki T, Kubodera N, Kamao M, Osakabe N, Suhara Y, Okano T.
[2]Hirota Y, Nakagawa K, Mimatsu S, Sawada N, Sakaki T, Kubodera N, Kamao M, Tsugawa N, Suhara Y, Okano T.
雑誌:[1]PLoS One. 2018 Oct 3;13(10):e0199856.
[2]Biochem Biophys Res Commun. 2017 Jan 29;483(1):359-365.
  • ビタミンD
  • Cyp27b1遺伝子欠損マウス
  • エルデカルシトール

廣田 佳久

論文サマリー

 活性型ビタミンDである1α,25-dihydroxyvitamin D3(1α,25D3)は、腸管からの能動的Ca吸収を促進し、Ca恒常性を保つだけでなく、骨吸収を抑制して骨形成を促進することにより、骨代謝を正常に維持している。1α,25D3が骨形成に重要な役割を担うことから、骨粗鬆症治療にAlfacalcidolとEldecalcitolなどのビタミンD製剤が用いられている。これまでにEldecalcitolはAlfacalcidolと異なり、それ自身が活性型リガンドであるため、直接骨に作用すると考えられるが、ELDが骨形成作用に優れている理由については明らかでない。

 25-hydroxyvitamin D 1α-hydroxylase(Cyp27b1)遺伝子欠損マウス(Cyp27b1-/-)は、Cyp27b1が欠損しているため、先天的に1α,25D3欠乏となり、離乳後より著明な低Ca血症、高副甲状腺ホルモン(PTH)血症を呈することで、骨の石灰化不全や成長板軟骨層の肥大化といった骨形成異常が起こる。しかし、Cyp27b1-/-ではビタミンD受容体(VDR)が正常に発現しているため、1α,25D3に対する応答性は正常に起こる。したがって、Cyp27b1-/-は、内因性の1α,25D3の影響を受けず外来的に投与された活性型ビタミンD誘導体の薬理作用を解析できる。

 そこで、Eldecalcitolの骨に対する作用を明らかにする目的でCyp27b1-/-を用いてAlfacalcidolと比較解析を行った。その結果、EldecalcitolはAlfacalcidolと比べ、十二指腸でのECaC2およびcalbindin-D9k、CYP24を強く誘導することで、Ca吸収を促進し血中1α,25D3濃度の低下を促し、骨形成を改善する作用を示すことが明らかとなった。また、骨形態計測よりEldecalcitolは、Alfacalcidolよりも強い骨石灰化や骨梁形成効果、海綿骨骨密度上昇作用を有することが明らかとなったことから、Eldecalcitolは、海綿骨骨密度が著明に減少する閉経後骨粗鬆症に対し、より有効な治療薬になり得ると考えられる。本実験からCyp27b1-/-を用いた内因的な1α,25D3が存在しない環境下において、我々はビタミンD誘導体のみの骨形成作用を評価する方法を見い出した。

廣田 佳久
図1 マウスの大腿骨骨梁の三次元画像解析像

廣田 佳久
図2 Eldecalcitolによる骨形成および骨吸収に対する役割

 Cyp27b1遺伝子欠損マウスは、薬剤耐性遺伝子の相同組み換えを手法で作製しましたが、現在の主流であるゲノム編集法とは異なり成功確率が低く、何百という中から良い受精卵を得ることが出ず諦めかけた時に得られた受精卵から作出されました。そこからも苦労の連続で、論文化までに非常に多くの時間がかかりました。本研究を遂行するにあたり、終始熱心にご指導を頂きました神戸薬科大学 岡野登志夫先生、中川公恵先生、鎌尾まや先生、大阪樟蔭女子大学 津川尚子先生、富山県立大学 榊利之先生、芝浦工業大学 須原義智先生に感謝いたします。また、ビタミンD誘導体をご恵与頂き、骨形態解析に多大なるご尽力を賜りました中外製薬株式会社 久保寺登先生(現:活性型ビタミンD誘導体研究所所長)、三松さんや礒本くんをはじめとする神戸薬科大学 衛生化学研究室の皆様に心より感謝申し上げます。(芝浦工業大学システム理工学部生命科学科・廣田 佳久)