日本骨代謝学会

The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

JP / EN
入会・変更手続
The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

Event/イベント情報

Book/関連書籍のご案内

member/会員ページ

1st Author

TOP > 1st Author > 家崎 高志

MAPKの1種であるErk5は正常な骨格形成に必須の因子である

The MAPK Erk5 is necessary for proper skeletogenesis involving a Smurf-Smad-Sox9 molecular axis.
著者:Iezaki T, Fukasawa K, Horie T, Park G, Robinson S, Nakaya M, Fujita H, Onishi Y, Ozaki K, Kanayama T, Hiraiwa M, Kitaguchi Y, Kaneda K, Yoneda Y, Takarada T, Guo XE, Kurose H, Hinoi E.
雑誌:Development. 2018 Jul 26;145(14).
  • 軟骨細胞
  • ユビキチン化
  • タンパク質翻訳後修飾
  • キナーゼ

家崎 高志

論文サマリー

Erk5はErk1、Erk2やJNKなどを含むMAPKファミリーの1つであり、様々な細胞内シグナルを調節するキナーゼである。Erk1、Erk2は骨格形成に必須の役割を持つことが知られているが、Erk5は全身欠損マウスが胎生致死であるため、骨格形成における役割は未だ明らかになっていない。本研究でErk5は、未分化間葉系幹細胞におけるSmurf/Smad経路の調節を介して骨格形成に重要な役割を果たすことを明らかにした。骨格標本を用いた解析により、Erk5を間葉系前駆細胞特異的に欠損したマウス(Prx1-Cre;Erk5 fl/flマウス)は野生型と比較して指の骨の石灰化が遅延することが認められた。また3週齢マウスのµCT解析では、四肢の骨の形成不全が認められた。胎児マウスLimb bud由来の間葉系前駆細胞培養系では、Erk5欠損細胞はType Ⅱ Collagen、Aggrecan、Sox9の発現上昇に伴って軟骨細胞の初期分化が亢進している一方で、Type X Collagen、MMP13の発現低下と後期分化の減弱が認められた。また、Erk5はSmad1タンパク質のSer206をリン酸化し、Smurf1によるSmad1のユビキチン化とそれに伴うプロテアソーム系による分解を促進すること、Smurf2タンパク質のThr249をリン酸化し、ユビキチンリガーゼ活性を上昇させ、Smadタンパク質の分解を促進することを明らかにした。次に、Smadタンパク質の導入が間葉系前駆細胞においてSox9 mRNAの転写を促進することを明らかにした。さらに間葉系前駆細胞特異的Erk5欠損マウスにSox9アレルの片方だけを欠損するように遺伝子改変したマウス (Prx1-Cre;Erk5 fl/fl;Sox9fl/+マウス) は、骨格の形成不全が一部回復することが認められた。これらの結果をまとめると、骨格形成におけるErk5は、Smurf/Smad/Sox9経路を調節することにより間葉系幹細胞におけるSox9 mRNAの転写を抑制することで、軟骨初期分化を抑制し、骨格形成に必須の役割を果たすことが明らかとなった。これらの結果からErk5/Smurf/Smad/Sox9経路は様々な骨格形成疾患における治療標的となることを示唆している。

家崎 高志

私は博士研究員として檜井栄一先生の下で研究活動を実施し、Erk5と骨格形成の研究の機会を得ました。この研究には大学院時代より関わっていましたが、細胞やマウスの細かな表現型の変化や、様々な観点から細胞内での分子機構を考えることの面白さを学ぶことができました。この研究を通じて檜井栄一先生をはじめとする研究室の皆様方にご協力をいただき、このような形で研究成果を発表することができました。今後も多くの方と協力して研究を行い、その研究が疾患の治療や予防に役立つことを期待しています。(金沢大学薬理学研究室・家崎 高志)