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関節リウマチ患者に於けるアダリムマブの寛解導入後の休薬:HONOR試験1年の結果より

Discontinuation of adalimumab after achieving remission in patients with established rheumatoid arthritis: 1-year outcome of the HONOR study
著者:Yoshiya Tanaka, Shintaro Hirata, Satoshi Kubo, Shunsuke Fukuyo, Kentaro Hanami, Norifumi Sawamukai, Kazuhisa Nakano, Shingo Nakayamada, Kunihiro Yamaoka, Fusae Sawamura, Kazuyoshi Saito
雑誌:Ann Rheum Dis. 2013 Nov 28. doi: 10.1136
  • 関節リウマチ
  • 生物学的製剤
  • 治療

田中 良哉

論文サマリー

関節リウマチ(RA)の治療では、生物学的製剤を併用することにより、高率な臨床的寛解の導入を可能とした。次の目標は、生物学的製剤(バイオ)により寛解を維持した後に、バイオからの離脱、即ち、バイオフリー寛解である。長期安全性、経済性などからも重要な課題である。
当科では、TNF抗体アダリムマブを用いて、同様に寛解維持後にバイオフリー寛解可能か否かを目的として、観察研究(HONORスタディ登録)を実施した。RAと診断され、MTXに治療抵抗性のRA 症例に対して、アダリムマブ40mgを2週間隔で皮下注射しMTXと併用した。アダリムマブ導入後1年以上経過した197例のうち、NSAIDとステロイド薬なしで臨床的寛解(DAS28<2.6)を24週以上維持し、インフォームドコンセントを得たRA患者75例のうち、52例でアダリムマブを休薬した。本研究は臨床試験登録(UMIN-CTR)を行い、本学倫理委員会で承認の上、実施された。
アダリムマブを1年間継続した群では1年後に83%が寛解を維持したが、休薬した群では48%が寛解維持と有意に低値であり、また、低疾患活動性の維持も62%であった。休薬後の1年間の寛解維持に関与する因子として、大変量解析により休薬時のDAS28低値が抽出され、ROC解析の結果cut-off値1.98と算出された。休薬時のDAS28が1.98の深い寛解を達成した場合、休薬1年後に68%が寛解、79%が低疾患活動性を維持した。休薬後に再燃した症例に対しても、アダリムマブの再投与により9ヶ月後に全員が低疾患活動性になった。また、休薬後低疾患活動性を維持した症例では、全例が構造的寛解を、94%が機能的寛解を1年間維持した。
以上、RA患者においてMTXとアダリムマブにより半年間寛解を維持すれば、構造的、機能的障害の進行なくアダリムマブ休薬が可能であることが示された。アダリムマブでも深い寛解に導入後のバイオフリー寛解の可能性が示唆され、抗TNF抗体製剤による新たな治療体系の構築に資するものと期待される。

田中 良哉

著者コメント

関節リウマチ(RA)の治療では、生物学的製剤を併用することにより、高率な臨床的寛解の導入を可能とした。しかし、生物学的製剤をいつまで使用し続けるか、休薬が可能かについては報告がなく、長期安全性、経済性などからも重要な喫緊の課題であった。本研究では、RA患者に対して、TNF阻害薬を用いて寛解維持されれば、生物学的製剤を休薬しても約半数で寛解が維持できるバイオフリー寛解の可能性が示された。著者らはインフリキシマブでも同様の可能性を報告してきた。これらの報告は生物学的製剤によるリウマチ治療のマイルストーンであると高く評価され、現在、国外でもバイオフリー寛解の可能性が検討、議論、導入されるようになってきた。(産業医科大学・田中 良哉)