日本骨代謝学会

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IRT7はSP7/Osterixのリジンアシル化を制御することで骨形成において重要な役割を担う

SIRT7 has a critical role in bone formation by regulating lysine acylation of SP7/Osterix.
著者:Fukuda M, Yoshizawa T, Karim MF, Sobuz SU, Korogi W, Kobayasi D, Okanishi H, Tasaki M, Ono K, Sawa T, Sato Y, Chirifu M, Masuda T, Nakamura T, Tanoue H, Nakashima K, Kobashigawa Y, Morioka H, Bober E, Ohtsuki S, Yamagata Y, Ando Y, Oike Y, Araki N, Takeda S, Mizuta H, Yamagata K.
雑誌:Nat Commun. 2018 Jul 19;9(1):2833.
  • SIRT7
  • Osterix
  • 骨芽細胞

福田 雅俊
ラボの細胞培養室にて吉澤達也准教授(左)と筆者(右)

論文サマリー

 サーチュイン(哺乳類ではSIRT1~SIRT7)はnicotinamide adenine dinucleotide(NAD)依存性の脱アシル化酵素として働き、老化やストレス応答、様々な代謝などの制御に関与する重要な因子である。SIRT1やSIRT6ノックアウト(KO)マウスでは骨量の低下が報告されているが、骨代謝に対するSIRT7の役割については全く明らかにされていなかった。そこで、SIRT7による骨代謝制御機構について詳細な解析を行った。

 骨形態計測による解析では、Sirt7 KOマウス腰椎の骨量、骨形成速度、骨芽細胞数が顕著に減少していた(図1a.b)。また、Sirt7の骨組織における発現は加齢により減少する事が判明した。SIRT7が骨芽細胞の機能を調節している可能性が示唆されたため、Sirt7 KOマウス初代骨芽細胞やSirt7ノックダウンMC3T3-E1細胞を用いて骨芽細胞分化実験を行った結果、SIRT7の欠失により分化マーカー遺伝子群の発現低下、石灰化の低下など、骨芽細胞の分化が著しく損なわれる事が判明した。さらに、骨芽細胞特異的Sirt7 KOマウスを解析したところ、骨形成の低下が確認された。以上から、SIRT7は骨芽細胞の分化に重要な核内因子であることが明らかとなった。

福田 雅俊
図1:骨形態計測による解析
a. Sirt7 KOマウス腰椎の骨量が減少している。
b. 骨形成速度と骨芽細胞数がSirt7 KOマウスで減少している。

 SIRT7による骨芽細胞分化制御のメカニズムを解明するため、骨芽細胞においてSIRT7と結合する因子をスクリーニングしたところ、SIRT7がOsterixに結合することが判明した。プルダウン法では、SIRT7がOsterixのC末端のZinc fingerドメインに結合することが明らかとなった。さらに、ルシフェラーゼアッセイにより、Sirt7 KOマウス初代骨芽細胞ではOsterixの転写活性が8割も減少していることを見出した。Sirt7ノックダウンMC3T3-E1細胞において減少したOsterixの転写活性化能は、野生型SIRT7の過剰発現で回復するが、酵素活性のない点変異SIRT7(H188Y)では改善されないことから、SIRT7の酵素活性がOsterixの転写活性化能に必要であることが明らかとなった。またOsterixのC末端に存在するリジンをアシル化されないアルギニンに置換した点変異体を用いたルシフェラーゼアッセイを行った結果、点変異Osterix(K368R)では野生型Osterixと比べて転写活性が4倍以上増加する事が明らかとなった(図2a)。さらに、Osterix(K368R)ではSirt7のノックダウンによるOsterixの転写活性の低下が見られなかった(図2b)。

福田 雅俊
図2:アシル化されない点変異Osterixを用いたルシフェラーゼアッセイ
a. 点変異Osterix(K368R)では野生型Osterixと比べて転写活性が4倍以上増加する。
b. 点変異Osterix(K368R)ではSirt7のノックダウンによるOsterixの転写活性の低下が見られない。

 以上の結果から、骨芽細胞におけるSIRT7はOsterixリジン368の脱アシル化を介してOsterixの転写活性化能を正に調節し、骨芽細胞分化を正常に制御することにより、骨組織の恒常性を維持する重要な核内因子であることが明らかとなった。老化などによりSIRT7が十分に働かない状況ではOsterixの転写活性が低いため、骨形成が低下し、それに伴う骨粗鬆症が引き起こされると考えられる(図3)。

福田 雅俊
図3:骨芽細胞におけるSIRT7はOsterixリジン368の脱アシル化を介してOsterixの転写活性化能を正に調節する。老化などによりSIRT7が十分に働かない状況ではOsterixの転写活性が低いため、骨形成が低下すると考えられる。

著者コメント

 私は熊本大学整形外科に入局し、2年間の臨床を経て熊本大学大学院に入学しました。整形外科医ということで、病態生化学分野にて骨芽細胞の研究を開始することになりましたが、基礎研究に関しては学生時代の実習でピペットマンを数回触った程度の素人でした。
 骨芽細胞の分化実験などは多くの時間を要するため、数か月の間、思うような結果が出ずにくじけそうになったり、熊本地震で被災し大変辛い思いをしたりもしました。想定していたよりも時間はかかってしまいましたが、難題に直面する度に先生方や研究室のメンバーに支えられて一つ一つデータを積み重ね、論文を提出することができました。ご指導いただきました吉澤達也准教授、山縣和也教授をはじめ、病態生化学分野の皆様や共著者の皆様には心よりお礼申し上げます。(熊本大学 整形外科・福田 雅俊)