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HYBIDは変形性関節症関節軟骨で過剰発現し、ヒアルロン酸分解に関わる

Hyaluronan-binding protein involved in hyaluronan depolymerization is up-regulated and involved in hyaluronan degradation in human osteoarthritic cartilage.
著者:Shimizu H, Shimoda M, Mochizuki S, Miyamae Y, Abe H, Chijiiwa M, Yoshida H, Shiozawa J, Ishijima M, Kaneko K, Kanaji A, Nakamura M, Toyama Y, Okada Y.
雑誌:The American Journal of Pathology 2018;188:2109-2119
  • HYBID
  • 変形性関節症
  • ヒアルロン酸分解

清水 英德

論文サマリー

 HYBID(Hyaluronan-binding protein involved in hyaluronan depolymerization)は、皮膚線維芽細胞や滑膜線維芽細胞でのヒアルロン酸(HA)分解に重要な役割を果たすが、変形性関節症(OA)関節軟骨での発現や機能は不明であった。本研究では、まずヒトOAと正常関節軟骨組織を用いてHYBIDの発現を免疫組織学的に調べた。その結果、HYBIDはOA関節軟骨のHA消失部位に局在する軟骨細胞で強く発現しており、HYBID免疫染色陽性細胞率は関節軟骨破壊を示すMankinスコアと正の相関を示した(Fig.1)。リアルタイムPCRによる解析で、HYBIDの発現はOA関節軟骨組織において正常関節軟骨より約4倍高値を示したが、HYAL-1(Hyaluronidase-1)、HYAL-2(Hyaluronidase-2)、CD44も有意な発現上昇を認めた。しかし、培養OA関節軟骨細胞において、これら遺伝子をsiRNAでノックダウンすると、HYBIDのノックダウンでのみHA分解活性が完全に消失した。また、OA関節軟骨細胞での二重免疫染色によりHYBIDはクラスリン被覆小胞に局在し、投与された高分子HAはクラスリン被覆小胞に取り込まれて分解されることが示された。OA関節軟骨細胞をOA関節組織で産生される8種類のサイトカインや成長因子で刺激した結果、TNF-αのみがHYBIDを過剰発現し、HA分解活性も上昇した(Fig.2)。以上の結果より、OA関節軟骨細胞においてはHYBID遺伝子発現が亢進しており、HYBIDはOA関節軟骨でのヒアルロン酸分解・消失に関わる可能性が示された。また、OA軟骨細胞におけるHYBIDの発現は、TNF-αによって発現・亢進することから、TNF-αを標的とした生物学的製剤がHYBID発現抑制を通してOA関節軟骨破壊抑制に有用な可能性が示唆された。HA分解はOA関節軟骨破壊の早期に出現することから、HYBIDの発現や活性阻害物質開発は、将来的な早期OA関節軟骨破壊抑制治療へとつながることが期待される。

清水 英德

清水 英德

著者コメント

 私は慶應義塾大学医学部整形外科に入局後、数年間臨床医として過ごした後、本学病理学教室にて研究を行う機会を頂きました。当初は、基礎研究に関する知識や経験の不足から、何度も挫折しそうになりました。そのようななかで、下田将之先生や岡田保典先生をはじめ共著者の先生方には、私を辛抱強くご指導していただくとともに、研究の完成にご尽力いただきました。本研究に関わってくださった全ての研究者に、この場をお借りして深く感謝申し上げます。この研究で得た経験を今後の臨床に活かしてゆきたいと考えております。(慶應義塾大学医学部整形外科学教室・清水 英德)