日本骨代謝学会

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ケモカインCXCL12は、LPS誘導破骨細胞形成および骨吸収を促進する

C-X-C Motif Chemokine 12 Enhances Lipopolysaccharide-Induced Osteoclastogenesis and Bone Resorption In Vivo.
著者:Shima K, Kimura K, Ishida M, Kishikawa A, Ogawa S, Qi J, Shen WR, Ohori F, Noguchi T, Marahleh A, Kitaura H.
雑誌:Calcif Tissue Int. 2018 Oct;103(4):431-442.
  • 破骨細胞
  • CXCL12
  • LPS

北浦 英樹・島 和弘

論文サマリー

 近年、ケモカインは、破骨細胞形成および機能において重要な役割を果たすことが報告されている。間質細胞由来因子1(SDF1)としても知られているC-X-Cモチーフケモカイン12(CXCL12)は、CXCケモカインファミリーに属する。 CXCL12は主に骨髄で発現するが、胸腺、脾臓、脳、肺、肝臓、腎臓などの他の組織でも発現する。このCXCL12は、リンパ球に対して強い走化性効果を有することはよく知られている。最近、脂肪細胞が産生するCXCL12はRANKLによる破骨細胞培養実験にて破骨細胞形成を促進することおよび破骨細胞機能を増強することがわかった。そのため、破骨細胞形成におけるCXCL12の役割を研究することは、疾患に関連するメカニズムの骨吸収を解明するために重要であると考えられている。しかし、生体内での炎症による破骨細胞形成に対する影響を見た報告はない。本研究では、LPS誘発破骨細胞形成および骨吸収に対するCXCL12の効果を調べた。マウスの頭蓋部皮下にLPSおよびCXCL12を投与した。破骨細胞数および骨吸収は、LPSのみを投与したマウスと比較して、LPSおよびCXCL12を共投与したマウスで有意に上昇した。さらに、OPG、CXCL12、CXCR4の発現はCXCL12の投与によりLPSの作用を増強しなかったが、RANKLおよびTNF-αのmRNAレベルは、LPSのみを投与したマウスと比較して、LPSおよびCXCL12を共投与したマウスが有意に高かった。CXCR4はCXCL12の受容体である。LPSによる破骨細胞形成は、CXCR4のアンタゴニストであるAMD3100にて抑制された。また、RANKLおよびTNF-αによる細胞培養実験での破骨細胞形成に対するCXCL12の直接刺激効果を確認した。CXCL12は直接、破骨細胞形成を促進することがわかった。さらに、TNF-αおよびRANKL mRNAレベルは、LPS単独で処理したマクロファージおよび骨芽細胞と比較して、CXCL12およびLPSで共処理したマクロファージおよび骨芽細胞においてそれぞれ上昇した。これらのことから、生体内でのLPSによる破骨細胞形成および骨吸収をCXCL12は、直接的に破骨細胞形成を促進すると同時に、LPSにより誘導される破骨細胞形成関連因子であるRANKLおよびTNF-aの発現も促進し、破骨細胞形成を促進することがわかった。(東北大学歯学研究科・北浦 英樹)

北浦 英樹・島 和弘
生体内でのLPSによる破骨細胞形成および骨吸収をCXCL12は、直接的に破骨細胞形成を促進すると同時に、LPSにより誘導される破骨細胞形成関連因子であるRANKLおよびTNF-αの発現も促進し、破骨細胞形成を促進する。

著者コメント

 私は東北大学大学院歯学研究科顎口腔矯正学分野に入局後、ビスフォスフォネートの痛みに関する研究を行っていました。2年前より本テーマを行うことになり、今まで行っていた実験と勝手が違いましたが何とか論文にまとめることができました。今回の結果では、CXCL12は破骨細胞分化を促進するという結果となり、さらにLPSが誘導するTNF-αやRANKLの発現を増加させることがわかりました。また、CXCL12の主たる受容体であるCXCR4のアンタゴニストであるAMD3100を投与することで頭蓋骨の破骨細胞分化を有意に抑制し今後の実験に発展しうる結果を示しました。本論文は、ご指導いただきました北浦英樹先生、また木村桂介先生の助力や研究室のメンバーの支援がなければ私一人では到底完成できませんでした。この場を借りて厚く御礼申し上げます。(東北大学歯学研究科・島 和弘)