日本骨代謝学会

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TOP > 1st Author > 増田 功

りんごプロシアニジンは、軟骨細胞においてミトコンドリア新生ならびにプロテオグリカン合成を促進する

Apple procyanidins promote mitochondrial biogenesis and proteoglycan biosynthesis in chondrocytes.
著者:Masuda I, Koike M, Nakashima S, Mizutani Y, Ozawa Y, Watanabe K, Sawada Y, Sugiyama H, Sugimoto A, Nojiri H, Sashihara K, Yokote K, Shimizu T.
雑誌:Sci Rep. 2018 May 8;8(1):7229.
  • りんごプロシアニジン
  • ミトコンドリア
  • 軟骨細胞

増田 功
(上段左から)渡辺憲史、小澤裕介、小池正人
(下段左から)清水孝彦、増田功、野尻英俊

論文サマリー

 近年の研究により、変形性関節症(OA)の発症・増悪には、軟骨細胞のミトコンドリア機能の低下が深く関係していることが明らかになってきた。しかしながら、軟骨細胞のミトコンドリアをターゲットとしたOAの介入研究は未開拓である。そこで我々は、疫学的にも幅広い生理機能が期待されており、世界的にも食経験が豊富な‘りんご’に着目し、それらに含まれるポリフェノール成分が軟骨細胞のミトコンドリアに与える影響を検証した。我々は、りんごポリフェノールの主要成分であるプロシアニジンの作用解明を目的として、独自の製法によりこれら成分のみを抽出・精製し実験に供ずることとした。

 りんごプロシアニジンを添加した軟骨細胞では、PGC-1の遺伝子発現量ならびにミトコンドリアDNAコピー数の有意な増加を認め、りんごプロシアニジンのミトコンドリア新生能が明らかとなった。またミトコンドリア機能が先天的に低下した軟骨細胞でもりんごプロシアニジンは同様の活性を示したが、驚くべきことに、著しく脱分極を起こしたミトコンドリアの膜電位はりんごプロシアニジンにより野生型と同程度にまでその状態が改善された。さらにりんごプロシアニジンは、軟骨細胞の重要な働きであるプロテオグリカン産生能を有意に増加させた。これにより、軟骨細胞のミトコンドリア量を増やすということが、OAを予防・治療するうえで有望なアプローチになり得ることが期待された。

 最後に、加齢様軟骨変性を忠実に再現する軟骨細胞特異的ミトコンドリア機能不全OAモデルマウス(軟骨細胞特異的Sod2欠損マウス)にりんごプロシアニジンを8週間経口投与したところ、機械的負荷条件下においてその組織病態は有意に抑制され、OAに対するりんごプロシアニジンの高い保護作用が確認された。

増田 功
機械的負荷条件下での16週齢マウス膝軟骨切片のサフラニンO染色像

著者コメント

 本研究は、多くの方とのご縁ならびにご支援があったからこそ、成し遂げることができたと確信しております。非常に特徴的な軟骨細胞の単離・培養からスタートし、動物実験においては靭帯切除術から軟骨変性評価に至るまで、実に多くの知識や技術を学ばせていただきました。このたび、りんごという身近な食材の健康機能の一端を解明できたことはたいへん喜ばしいことですが、同時に、軟骨細胞特異的Sod2欠損マウスと出会えたからこそ、ミトコンドリアに対するりんごの作用に目を向けることができました。最後になりますが、本研究のご指導を賜りました清水孝彦先生、小池正人先生をはじめ、このような貴重な研究テーマを与えて下さったアサヒグループの皆様、ならびに多方面からサポートいただきました諸先生方に、心より感謝申し上げます。(千葉大学大学院医学研究院・増田 功)